紙恐怖症から発想 久保さん起業プレゼンV

起業家の応援を通じて地域の活性化を目指す「第1回和歌山『地域クラウド交流会』」(実行委員会主催)で、和歌山大学経済学部1回生の久保友紀さん(19)のプレゼンテーションが1位に選ばれた。不安障害の一種と考えられる「紙恐怖症」と闘ってきた経験をもとに発案した便利グッズのアイデアが評価された。久保さんは「商品を通して、このような症状で苦しんでいる人がいることを知ってもらいたい」と話している。

小学生の頃から、本やダンボール、レシートなどの紙が苦手。触った時の質感や紙と手がこすれる音に恐怖を感じてきた。授業中に教科書を広げたりノートをめくったりするのもストレスで、勉強に支障が出た。だが、症状に対する周囲の理解はなく、友人からは「そんなわけないじゃん」と言われ悲しかった。

教科書はいつもかばんに入れたまま。次第に勉強から遠ざかった。高校時代はバイトに遊びにと楽しく過ごしていたが、心の中では悔しくてたまらなかったという。

起業を志したのは、大学でお世話になっている先生に症状のことを明かした際、「そういう人は多いのかな。困っていることはないの」などと聞かれたのがきっかけ。これまで人に隠すことが多かったが、「自分と同じ立場の人が我慢することなく日常生活を送れるようなビジネスを立ち上げよう」と発想を転換した。

考えたのは、ペンや指輪などに貼って使う小さな粘着テープ。粘着部分に教科書やノートのページを当てると、紙に直接手を触れずにページをめくることができる。学力に対する劣等感を常に抱えてきた経験から、この商品が「紙に対するストレスを少しでも軽減し、授業や勉強が充実したものになれば」と願う。ニッチな分野だが、汚れた手で紙を扱うような場面でも役立つのではと考えている。

今回のプレゼンテーションで初めて、自分の思いを大勢の前で伝え、自信がついた。起業準備に専念しようと、バイトも遊びもやめた。「人より努力しないとついていけないから」と大学の勉強も必死だ。同じように起業を目指す仲間も応援してくれる。「在学中に結果を残したい。勉強面での苦労は多かったが、何とかはい上がりたい」と前向きだ。

「同じ悩みを持つ人の助けになれば」と話す久保さん (和歌山市の和歌山大学で)

「同じ悩みを持つ人の助けになれば」と話す久保さん (和歌山市の和歌山大学で)

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