水災害リスクの低減を しゅんせつ費を特定財源に

鶴保 庸介

新しい令和の時代が幕を開けました。新天皇のご即位を心よりお祝いするとともに、これまで常にわれわれ国民に寄り添ったご活動を続けてこられた上皇上皇后両陛下に、感謝と敬意を新たにしているところです。
「平成」という時代がどのような時代だったか―それぞれの方がそれぞれの思いをお持ちのことと思いますが、残念ながら数多くの自然災害に見舞われたことは事実です。2度の大震災はもとより、最近は局地的な豪雨やそれに伴う水害、土砂災害など、「水」に関連する災害がいつ身近で起こってもおかしくない、こんな不安を感じられている方も多いと思います。広島県をはじめ西日本を中心に甚大な被害を出した平成30年7月豪雨のことは皆さまのご記憶にも新しいかと思います。
これは何も日本に限ったことではありません。2017年、世界で発生した自然災害の47%は水関連で、1980年~2017年の平均で見ても実に40%を占めているのです。水防災に対する意識の向上、投資の必要性は今や世界の共通認識となっているといえます。
わが国もこれまで決して手をこまねいてきたわけではありません。「日本は自然災害に見舞われやすい地理的条件ではあるが、ハード・ソフト対策によってそのリスクを低減できている数少ない国の一つである」―2016年に発表された国連大学の調査結果です。ただ、それでも自然災害が発生するたびに人的・物的被害が出て、悲しい思いをされる方がいらっしゃることも事実です。先に述べた平成30年豪雨の後には、これまでの枠組みにとらわれない新たな補助事業も創設されましたし、昨年度からは「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」も始まっています。
周辺の住宅地などよりも河床の方が高い標高にある、いわゆる「天井川」や、これに類するような河川は日本全国、至る所に存在しています。昨今、気候変動の影響からゲリラ豪雨の発生も珍しくなくなってきていますが、豪雨によって水位が上昇してひとたび氾濫してしまうと、このような河川では広範囲に、高速度で、長期的に被害が及んでしまうのです。もちろん、洪水被害のすべてがこれに起因するわけではなく、河川ごとに有効な手段は異なりますが、定期的に河床のしゅんせつ(たまった土砂を取り除くこと)を行うことが河川由来の水災害リスクを低減できるという点について大きな異論はないと思います。
私はかねてより、河川のしゅんせつをもっと積極的に実施できるような枠組みをつくることはできないか、常々考えてきました。現在、先に述べた3か年緊急対策において、河道掘削(河の水が流れる道を掘って面積を広くし、水位を低下させる)も実施されていますが、しゅんせつ工事は期間限定の集中投資を行えば良いというものではなく、定期的に行わねばならない性質のものです。もちろん国民的な議論は必要ですが、新たな特定財源を創設するしかないのではないか、と私は考えています。皆さま方からの積極的なご教示、ご支援を頂ければ幸いです。

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