小野田寛郎さんの思い今に 宇賀部神社の石碑

 “頭の神様”として慕われ、和歌山県内外から参拝者の絶えない海南市小野田の宇賀部神社(小野田典生宮司)。受験の合格祈願だけでなく不登校に悩む親子が訪れることもあり、神社ゆかりの小野田寛郎元少尉の遺した「暮らしの中に笑いを」とのメッセージは、今も青少年に届けられている。

 同神社の御利益は頭の病気全般の平癒や学業成就、厄よけなど。神職を務めている小野田家は第2次世界大戦後約30年間、フィリピンのルバング島で潜伏生活を送り「最後の日本兵」として知られた寛郎さんの本家にあたる。

 高校の定時制課程で教員を務めていた小野田宮司は、生前の寛郎さんと青少年の自死について話したことがあり「笑うだけでなえた心が鼓舞される」との言葉が、極限状態を生き抜いた人からのメッセージとして印象に残っている。

 小野田宮司は「18歳以下の自殺者が増える傾向があるという夏休み明けが心配です」と言い、2016年、境内に寛郎さんの著書『生きる』の中から「死を選んではならない」との一節が記された石碑を設置した。神社を訪れた人に、強靭(きょうじん)な精神力で戦場の死の恐怖を克服した寛郎さんのことを知ってもらい、「ぎりぎりの精神状態になる前に相談をしていただければ」と社務所も開放。青少年が希望を持って人生を送ることを願っている。

寛郎さんの言葉が記された石碑と小野田宮司

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