国会で「ゴジラ」見て 出演の宝田明さんが講演

1954年公開の映画『ゴジラ』第1作のデジタルリマスター版を鑑賞し、主演俳優宝田明さん(85)の講演を聞くイベントが25日、和歌山市民会館で開かれた。参加した市民ら約450人は、同作が「水爆大怪獣映画」として核兵器を持つ世界に警鐘を鳴らす企画だったことや、宝田さんの戦争体験に思いを寄せ、平和の尊さを学んだ。和歌山G&Tプロジェクト、9条ネットわかやまが主催。

イベントは「ゴジラ和歌山上陸!宝田明さんと考える『平和』~これまでとこれからと~」と銘打ち開催。きっかけは和歌山信愛女子短期大学の伊藤宏教授が「ゴジラ映画における原子力描写」とのテーマで寄稿した新聞記事を宝田さんが読んだこと。「ゴジラを真摯(しんし)に、アカデミックに捉えている」と感銘を受けて伊藤教授に連絡し、講演会が実現した。

講演内容は、45年の終戦を旧満州ハルピンで迎え、小学5年生で目にしたロシア兵の残虐な行い、自身が麻酔もなしに受けた銃弾の傷の手術体験や、54年に第6期東宝ニューフェイスとして俳優の道を歩み始めたことに及ぶこれまでの歩み。悲惨な場面から意義深い思い出まで、終始軽妙な語り口でドラマチックに表現する宝田さんに、会場は涙したり笑いを誘われたりして魅了されていた。

宝田さんは現代の世界情勢について「核兵器が国家間の力のバランスを取るために活用されているのはとても悲しいこと」と言及。「放射能で巨大化したゴジラも人間の醜い争いに巻き込まれた被害者の一人」と当時、撮影後の試写会で号泣したことにふれ「国家の運命はわずかな人の意思決定によるもの。ぜひ国会議事堂で『ゴジラ』を見てもらいたい」と力を込めた。

会場にはゴジラを「人気怪獣であるばかりでなく、核廃絶に全く展望が見えていないことを現代に伝えるメッセンジャー」とする伊藤教授のフィギュアコレクションが並び、来場者らは足を止めて見入っていた。

戦時中の体験を話す宝田さん㊨

戦時中の体験を話す宝田さん㊨

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