WAKAYAMA NEWS HARBOR
和歌山さんぽみちプロジェクト

氷砂糖で「浸透圧」を調整

これまで10種類に及ぶさまざまな梅酒カクテルの作り方やその味わいを記してきたが、共通して言えることは、梅の果実から出たエキスの風味、味わい、甘さを引き立てる数々の飲料の存在。
梅酒づくりには収穫間もない梅の果実と氷砂糖、酒(ホワイトリカーと呼ばれる甲類焼酎など)を使うが、なぜ氷砂糖を使うのかご存じだろうか。実は、氷砂糖と酒の組み合わせが、梅のエキスを抽出することに役立っているという。今週は梅酒ができる仕組みを紹介したい。
梅の収穫時期、ご家庭で自家製梅酒を作るという方も多いだろう。スーパーやホームセンターで売られている「果実酒瓶」と呼ばれる専用のガラス容器と氷砂糖の陳列は、この時期の風物詩といえるもの。
梅、氷砂糖、酒を入れた果実酒瓶の中では「浸透圧」による梅エキスの抽出が起きている。仕組みはこうだ。まず、実の中に含まれる糖分が外の糖度と同じにしようとする。梅の表皮にある穴は小さく、糖分を外に出すことはできないが、穴より小さな分子であるアルコールや水は通ることができるため、梅の中に入ってくる。この時、梅の実は膨張した状態になる。
続いて氷砂糖が活躍する。氷砂糖はグラニュー糖などと違い、時間をかけて酒の中に糖分が溶け込んでいく特徴を持つ。氷砂糖が酒に溶け込むと、梅の実の中よりも外の方が、糖度が増してくる。梅は浸透圧を使い、糖分を外に出そうという動きをする。表皮の構造上、糖分を外に出せない梅は、エキスがふんだんに混じったアルコールを外に放出し、徐々にしぼんでいく。これが、氷砂糖が解けきる3カ月から半年ほどの間に起き、それを経過した頃が飲み頃になるという具合。
氷砂糖を使った浸透圧の調整で引き立つ梅酒の味わい。化学の仕組みがここにある。
(次田尚弘/和歌山市)