喜び分かち合う祭典 「きのくに音楽祭」開幕

和歌山県内初の本格的な音楽祭「きのくに音楽祭」が4日、開幕した。県出身、ゆかりの演奏家を中心に、和歌山市内各会場で6日まで数々のコンサートが開かれ、聴衆と音楽の喜びを分かち合う。3日夜はJR和歌山駅前で宵祭を行い、和歌山児童合唱団が音楽祭テーマ曲を世界初演。4日は伊太祁曽神社での奉納演奏、和歌山城でのライブなどで音楽祭のスタートを彩った。

実行委員会と県立図書館が主催。実行委員は16人で、同市出身のバイオリニストで東京藝術大学学長の澤和樹さんが総監督、同市交響楽団理事の髙橋功二さんが実行委員長、箏曲家の西陽子さんがチーフプロデューサーを務め、手作りで約2年かけて準備を進めてきた。メイン会場は同館2階(西高松)のメディア・アート・ホール。

3日は雨が断続的に降り、屋外での宵祭は開催が心配されたが、本番までに雨は上がり、駅利用者らが足を止め、歌声に聴き入った。

出演した和歌山児童合唱団は、数々の国際コンクールで上位入賞の実績を誇る、県を代表する合唱団。沼丸晴彦さんの指揮で、県出身の作曲家・山路敦司さんが書き下ろした音楽祭テーマ曲『雨上がりの朝に』の世界初演を担当し、親しみやすく未来への希望を感じさせる旋律を、澄んだハーモニーで歌い上げた。

同合唱団はことし7月、世界遺産となっている唯一の音楽祭、エストニアの「歌と踊りの祭典」に日本の団体で初めて招待され、宵祭では同祭典で歌ったエストニア語の合唱曲も披露した。

団長で近畿大学付属和歌山高校2年生の亀井明花梨さん(17)は、テーマ曲の初演を終え「とても光栄なこと。メロディーがすごく奇麗で、歌っていて気持ちがいい」と笑顔。初の音楽祭については「和歌山が音楽でいっぱいになり、多くの人が関わってくれるのはうれしい」と話していた。

初日の4日は、午前9時から伊太祁曽神社で行われた奉納演奏で開幕。木の神様「五十猛命(いたけるのみこと)」を祭る本殿前で、約80人が訪れる中、澤さんがバッハの『無伴奏バイオリンソナタ第1番』よりアダージョ、西さんが八橋検校の『六段』を独奏した後、2人の合奏で『雨上がりの朝に』を奉納した。

前日の雨から打って変わった快晴で、テーマ曲のタイトル通りの音楽祭のスタートとなった。

この日は、和歌山城でバイオリンと尺八、ピアノの異色の編成によるライブ、メディア・アート・ホールでは、紀州徳川家16代当主・徳川頼貞が収集した音楽コレクション「南葵音楽文庫」にゆかりのあるチェロの音楽を中心としたコンサートも開かれた。

澤さんは「野外を含め多くの演奏会があり、入りやすい雰囲気づくりに力を入れてきた。南葵音楽文庫についても知ってもらい、普段はクラシック音楽や邦楽に敷居の高さを感じている人に足を運んでいただきたい」と話している。

プログラムなど音楽祭の詳しい情報はホームページ(http://kinokuni-fes.com/)に掲載。問い合わせは実行委事務局(℡073・436・9530)。

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