息子が語る渡辺茂男さん 語りの森記念講演

 翻訳家で絵本作家の渡辺鉄太さんの講演会「『へなそうる』のいる不思議な森 父、渡辺茂男の物語と私」が12日、和歌山市伝法橋南ノ町の市民会館小ホールで開かれた。和歌山おはなしの会「語りの森」の31周年を記念して開催。渡辺さんの父、茂男さんの児童書『もりのへなそうる』を中心に、物語のエピソードや子どもたちへの文学の伝え方を語った。

 茂男さんは『エルマーのぼうけん』シリーズを訳し、『くまたくん』シリーズなどの絵本を執筆たことで知られ、2006年に78歳で死去している。茂男さんの著書『心に緑の種をまく』を通して語りの森が学習会を行ったことから、鉄太さんの講演会の開催につながった。

 『もりのへなそうる』は、てつたくんとみつやくんが森で卵を見つけ、卵からかえった竜のへなそうると遊ぶというお話。

 鉄太さんは、現在の単行本になるまで、雑誌「母の友」に連載していた『てつたくんのぼうけん』が『もりのへなそうる』の原型になったことや、幼少期の鉄太さん兄弟と、一緒に遊んでいた友達の様子から原稿に加筆が重ねられたこと、茂男さん自身が読んだ作品のエッセンスや現実で見聞きした子どもたちの様子が物語に織り込まれていることを紹介。

 『くまのプーさん』などの影響も受けているという最後のシーンについて、「子ども時代が終わる悲しさを感じさせるが、父は悲観的に捉えているわけではなかった。大人になっても自分の子どもの部分はなくならず、父も自分の中の子どもの声を聞いて物語を書いていた」と茂男さん流の書き方を話した。

 鉄太さんは、自身が活動するオーストラリアで日本の本を貸し出し、日本文化を体験する「メルボルン子ども文庫」の取り組みも紹介。自然体験を通し、物語を伝えるための実体験の必要を語った。

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