イタリアで紀州発信 食や歴史を県内ロケ

 日本の魅力を海外に発信する、総務省の「放送コンテンツ海外展開強化事業」に、テレビ和歌山(和歌山県和歌山市栄谷、柏原康文社長)の企画が採択された。イタリアで人気の日本人料理人が県内の食や文化、歴史を巡って旅をする番組を制作し、同国で放送する取り組みで、現在、県内各地で撮影が進められている。

 同強化事業は、民間事業者が日本の魅力を発信するコンテンツを制作し、海外で放送することなどにより、訪日観光客の増加や地域産品の販路拡大を進め、経済活性化を図ることを目的としている。

 テレビ和歌山は、2018年度第二次補正予算の同強化事業に応募し、申請52件の中から16件の採択事業に選ばれた。

 事業名は「Hiroが紹介!〝和歌山の魅力〟食と歴史の旅」。イタリアのグルメ専門放送「ガンベロロッソ・チャンネル」と連携し、同国在住で知名度の高い日本人料理人「Hiro」こと正田博彦さん(43)がレギュラー出演している料理番組の特別編を制作し、豊かな農水産物を誇る和歌山の食、伝統工芸や世界遺産などの歴史・文化を紹介する。

 12月に30分枠の番組を全4回放送し、さらに連動事業として、来年1月にはガンベロロッソの協力の下、ローマで和歌山の食と歴史を紹介するイベントの開催も予定。イタリアから和歌山へのインバウンドの増加、県産品の販売促進などに期待が高まる。

 今月上旬から正田さんとイタリアのスタッフ5人が来県し、中旬にかけて撮影中。ロケ地は、ガンベロロッソ側の要望を基に、テレビ和歌山が取材網を生かしてコーディネートしており、和歌山城や高野山、根来寺、熊野三山など歴史的な名所の他、湯浅町のしょうゆ醸造現場、みなべ町の梅農家、かつらぎ町の柿農家、新宮市のなれずし、那智勝浦町のマグロ料理など、県内のグルメの数々を取材している。

 海南市では、紀州漆器の谷岡漆芸店を訪れ、伝統工芸士の谷岡敏史さん(81)の仕事場を撮影。谷岡さんは、器の表面をとぎ、朱色の漆を塗る作業を披露し、正田さんは、日本食に欠かすことができない漆器の魅力について谷岡さんと語りながら、熟練の職人技に見入った。

 谷岡さんは「イタリアから取材に来られたのは初めてですが、道具や私の手を細かく撮影されていて、今まで受けた取材とは違いました」と話し、「イタリアの人に漆器という言葉を知ってもらい、和歌山と日本の文化に関心を持ってもらえたらうれしい」と期待を寄せた。

 正田さんは「和歌山には世界遺産や絶景、訪れて楽しい場所が数多くあり、おいしい食材もたくさん。関西国際空港から近く、ポテンシャルのある地域だと思っています」と話していた。

紀州漆器について谷岡さん㊧と話す正田さん

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧