県名匠に志賀さん 紀州桐箪笥の伝統工芸士

伝統ある工芸品や生活用品などの製作技能を保持し、技術文化の向上に功績がある優れた技術者に贈られる2019年度「県名匠表彰」に、紀州桐箪笥(たんす)製作を手掛ける和歌山県和歌山市の志賀啓二さん(70)が選ばれ、28日に県庁で表彰式が行われる。

紀州桐箪笥は、江戸時代末期には現在の和歌山市で製造技術が確立したと考えられており、明治期には、大阪圏の需要を受けて地廻り産地として発展し、大阪―和歌山を結ぶ南海鉄道の開通で貨物輸送が可能になったことを機に、さらに製作が盛んになり、技術面でも進歩を遂げるようになった。

志賀さんは、㈱シガ木工の6代目として18歳から父の下で修行を積み、以来52年間、紀州桐箪笥製作に従事。自然乾燥、板を接合する矧(は)ぎ加工、本体加工、組み立て、仕上げなどの製作工程のほぼ全てを手仕事で仕上げられる数少ない職人の一人であり、現在は主に仕上げ加工を専門とし、2008年に塗装部門で伝統工芸士の認定を受けている。

白い木肌を際立たせる「砥の粉(とのこ)仕上げ」に対し、木目を模様として浮き上がらせる「焼き桐仕上げ」を考案。さらに県工業技術センターと共に、「砥の粉」に色彩を施すことで現代的な彩色の桐箪笥に仕上げる技法を開発するなど、優れた技術の継承にとどまらず、次代に続く新たな紀州桐箪笥の製作に打ち込んできた。

1999年に同社の代表取締役に就任すると、後進の指導にも力を注ぎ、社内で7人の伝統工芸士を育成した。

県家具工業協同組合では設立時から理事を務め、紀州桐箪笥協同組合では伝統的工芸品「紀州箪笥」の国指定に中心的役割を果たした。13年には、県内で初めて開かれた「第32回全国伝統工芸士和歌山大会」の副委員長に就任し、大会の成功に尽力した。

技術者としてだけでなく、業界の発展にも寄与している功績は多大だとして、本年度の県名匠の受賞が決まった。

 

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