掛ける言葉見つからない 夏の高校野球中止で

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、8月10日から兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催予定だった第102回全国高校野球選手権大会は20日、中止が決まった。戦後初めての事態で、地方大会も中止となる。和歌山県内の高校野球関係者や野球ファンからは中止に理解を示しながらも、残念がる声が相次いだ。

県高野連の伊藤誠悟理事長は本紙の取材に「自身が高校3年生だったらと考えたら衝撃が大き過ぎる。残念だ」と語り、6月9日に開く県高野連の理事会で今後の対応を話し合う方針であることを明かした。

地方大会に替わる大会の開催を模索しているといい、「社会がこれだけ目まぐるしく変化しており、また多くの新規感染者が確認される可能性もなくはない。部活動は教育活動の一環。学校もまだ休校している中、いつから対外試合ができるのかなど開催にはいろいろなハードルがある」と話した。

3年連続で夏の甲子園に出場している智弁和歌山高。中谷仁監督は20日午後5時40分ごろ、代表取材に応じた。選手と話すのはこれからという状況で、「本当につらい。子どもたちに何て声を掛けていいか言葉が見つからない」と声を絞り出した。

チームの状況については「休校中も生徒たちは自主練習を続けてきた。練習試合ができていないので、例年に比べチームプレーの調整ができていない」と説明した。

県立向陽高の山本慎監督は、「こうした状況なので覚悟はしていた。残念としか言いようがない」と無念さをにじませた。自身は同高OBで高校時代は好守の内野手として活躍。「高3の夏は初戦で敗れたが良くも悪くも思い出深い。当時のメンバーで集まるといつもその時の話になる」といい、「選手たちには前を向いてできる範囲で体を動かすよう伝えてきた。どんな形でもよいので選手が区切りをつけられる大会があってくれたら」と話した。

小さい頃から高校野球ファンという紀の川市の男性(32)は「今の状況を考えると中止はやむを得ないと思うが、3年生にとって最後の夏は高校野球の集大成。切り替えて次の目標に向かうことができるのか心配になる。春も夏も大会が中止になることで選手がアピールする場がなくなり、ドラフトに影響が出るのではないかと気になっている」と話していた。

 

2019年大会の3回戦、延長14回の激闘の末に星稜に敗れた智弁和歌山。県勢は甲子園で球史に残る名勝負を数多く演じてきた