ポストコロナの財政金融策 ―タダのランチは無い

岸本 周平

緊急事態宣言が全国的に解除されました。これから、徐々にウイズコロナの生活が始まります。まずは、ダメージを受けた企業や事業主、個人の救済のための施策を実施し、追加しなければなりません。何より社会的弱者の命と暮らしを守ることです。そして、第2波、第3波の流行に備えて、ワクチンと治療薬の開発に全力で立ち向う。そのためには国民民主党の提案した100兆円規模の大胆な政策が必要ですが、まず補正予算には協力します。
そして、皆で協力してコロナ危機を乗り越えたら、財政再建の道筋を立てることも重要です。東日本大震災の復興の時も、その財源は25年間にわたって所得税に2・1%を上乗せしてまかなうことにしました。住民税を一人千円10年間上乗せし、日本たばこの株式売却益もあてています。
MMTの論者からは、増税なんかしなくても自国通貨で借金するならいくらでも大丈夫との声が聞こえてきます。確かに、コロナ以前の日本はあたかもMMTの実験の場でした。日銀による財政ファイナンスをしても金利は上がりません。それは、家計や企業の民間部門の貯蓄の伸びが政府の借金の伸びを上回っていたからです。いつまでも、そうはいきません。自国通貨を発行して借金できても、結局インフレになります。MMTの論者はインフレになれば増税すれば良いと言います。それができれば苦労はないのです。もし、MMT論者が正しいのなら、ローマ帝国も大英帝国も江戸幕府も同じことをやっていたはずです。同じ人間ですから、私たちの方が賢いとは思えません。経済学の初歩では「タダのランチは無い」ということを学びました。
世界中で財政の大盤振る舞いと金融緩和が行われていますから、いわゆる「過剰流動性」の問題が起きる可能性があります。だぶついたお金が株式や債券のマーケットに流れ込めばバブルになります。既に今の株式市場がそうなりつつあります。発展途上国の債務問題や新興国の為替暴落による世界的金融危機とバブル崩壊が重なった時、さらに国債を発行して破たんした金融機関を救えるかどうか疑問です。その意味でも、中長期的な財政再建計画はとても重要なのです。

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