悪疫退散へ希望の花火 有田川で打ち上げ

「新型コロナウイルスに打ち勝とう」との思いを込め、悪疫退散を祈願する「Cheer up!(チア・アップ)花火プロジェクト」が1日夜、全国一斉に行われ、和歌山県内では有田川町の夜空を大輪の花火が彩った。感染防止のため、人が集まらないよう日時、場所を公表せずに打ち上げられたが、長引くコロナの影響で苦境にある人たちに癒やしのひとときを届ける〝サプライズ〟となった。

新型コロナの影響により、全国で今夏の花火大会の中止が相次ぎ、花火業界も深刻な影響を受ける中、一日も早い収束を願い、希望や元気を届ける取り組みができないかと、日本煙火協会(東京都)の青年部有志が企画し、賛同した163社が参加した。

和歌山で賛同したのは、県内唯一の花火製造販売会社、㈲紀州煙火(同町西丹生図、藪田さゆり社長)。同社2代目で現会長の藪田善助さん(77)によると、同業者からプロジェクト参加の誘いがあり、「まだ無理とちがうか。もう少し収まってからの方が」と迷う気持ちもあったが、いま花火を見た人がどう感じてくれるのか、やってみて結果を見てみようと、参加を決めた。

同社は例年、1万7000発ほどの花火を製造し、和歌山市の「港まつり花火大会」をはじめ県内を中心に約40カ所の花火大会で打ち上げてきたが、ことしは新型コロナで大会が軒並み中止となり、「全滅」の状態。

花火師歴62年の善助さんにとってもこんな事態は初めての経験で、「戦争以来ではないか」と頭を抱えながらも、今は作れるだけ作っておこうと花火の製造を続けている。

今回は、同社が試し打ちに使っている工場近くの小高い丘の上から、約30発を打ち上げた。風がなく、気象条件は良好。羽を広げたような形の「蝶」や「半輪」、光が降るように線を描く「柳」、点滅する花火などがあり、赤や黄色、青など鮮やかな光が半径50~100㍍ほどに広がった。

麓から打ち上げを見守った善助さんは「奇麗に見えていた。100点満点とはいかないが、90点くらい」と出来栄えに満足した様子。

打ち上げ現場を指揮した、善助さんの娘で社長のさゆりさんは「全国の皆さんと一緒に打ち上げができることはなかなかない。無事に終えてひと安心した」と話し、「(今回の取り組みで)皆さんが『花火を見たい』と思ってくれたら」と期待を寄せた。

サプライズで夜空を彩った花火(長時間露光を2枚合成)

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