コロナでわかった日本の不都合な真実 ―現実を直視して出直そう

岸本 周平

 新型コロナウイルス感染症の第2波とも言える状況になりつつありますが、感染症対策と経済活動との共存を目指す必要があります。それでも、コロナ終息前の政府の「GoToトラベル」キャンペーン、しかも突然の東京除外。政府の施策はちぐはぐですし、今回の給付金関係のデジタル化のお粗末さには驚かされました。オンラインでの教育も先進国とは言えない状況です。世界第3位のGDP、高度な技術力を持つ「ものづくり大国」というイメージとはかけ離れた現実がコロナによってあぶりだされました。1988年、世界のGDPに占める日本のシェアは16%。2018年には6%まで落ち込みました。中国はこの間、2%から16%に躍進。予測では2030年代に日本のシェアが3%、中国は20%を超えてきます。一人当たり国民所得はアジアでもトップクラスではなくなっています。これが現実です。
 一昔前には、現場力を競う技能オリンピックで日本は常に1位でした。最近は7位、9位と低迷しています。雇用者の賃金はこの20年間で米国が2倍、EUが1・6倍に対して、日本は1割減です。アベノミクスは株価を上げるだけで、経済の基本構造は劣化を続けています。そして、私たちはこのような不都合な真実から目を背けてきました。
 出版界では反韓、反中のヘイト本が売られ、テレビ局は「日本はイケてる」番組を特集。日本をほめる番組は視聴率が上がり、逆だと下がるそうです。75年前の大本営発表を私たち国民自身が望んでいるかのようです。
 経済は資本、労働、技術の投入量が増加して成長します。若年労働力人口が減っているのですから、全体のGDPが伸びないのは当然です。しかし、一人当たりの生産性が上がれば、個人の生活の豊かさは維持できます。実際、今でも一人当たりの生産性は1%近く伸びています。国民一人ひとりはみんな頑張って働いているのです。
 成熟した日本経済の現実やデジタル化の遅れなどの弱点を正直に認めて、身の丈に合った新しい経済や社会のあり方を考えることが必要です。日本には、どん底からはい上がる時に素晴らしいパワーを発揮してきた歴史があるのですから。

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