今こそ、もっと和歌山 「三代目」吉田社長

立秋が過ぎても猛烈な暑さが続き、まだまだビールがおいしい季節。和歌山麦酒醸造所「三代目」(和歌山県和歌山市十一番丁、吉田友之社長)は、醸造所横に飲食店が併設されている、日本では珍しい“ブルワリーパブ”スタイル。「オール和歌山」をコンセプトに生まれたオリジナルクラフトビール「AGARA」など、地元への思いを形にしながら、新しい取り組みを続けている。アフターコロナの過ごし方が問われる中、地元で築き上げたサイクルを生かし、和歌山の魅力を発信する吉田社長に話を聞いた。

2004年、同市六番丁に居酒屋「紀州応援酒場三代目」をオープン。独自のスパイスがクセになる手羽先や、締めラーメンまでが絶品の杜氏鍋など、看板メニューを中心に、食事や酒が楽しめる店として、地元の人はもちろん旅行者などからも人気の店へと成長。吉田社長の地元愛がうかがえる屋号の下、地元食材や酒を取り扱う中で、ある旅行者に「和歌山市には地ビールはないのか」と尋ねられ、「そういえばないなぁ。せっかく和歌山に来てくれたのだから、地のビールを飲んでもらいたい」と、和歌山の食文化に合ったビールを製造しようと決意。酒造製造免許を取得し、和歌山の水を仕込み水に使用したビール造りを始めた。

次第に常連客らから、「もっといろんなビールを造ってほしい」「自宅でも楽しみたい」などの声が寄せられるように。そこで、ビール醸造を本格的に行うため、17年11月、現在の店舗に移転。150㍑の発酵タンクを2基から7基に増設し、和歌山麦酒醸造所「三代目」が誕生した。

新たに開発したクラフトビールは、生産者らとのつながりを大切にしながら、県産の麦、ホップ、水、果物などを使用したオール和歌山ビール「AGARA」。名前は、「和歌山のことを考えてもらうきっかけになれば」と、和歌山大学の学生らにプロジェクトを依頼。県民に募集し、一般投票で決めたまさに〝あがら〟で造ったビール。

サイズや傷が原因で破棄されるようなミカンを買い取り造った「ミカンのペールエール」をはじめ、龍神のユズ、荒川の桃、清水の山椒など、季節ごとの和歌山の味が楽しめるのも、クラフトビールならでは。「背景全てが商品だと思っています」と吉田さん。「効率だけを考えた生産ではなく、人とのつながりや地域への思いを最優先に、みんなで完成させる。その分、価格的には少し割高になるかもしれないが、その価値をしっかり受け取ってもらえるように、誇りと自信を持って商品を届けたい」と話す。

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛など、飲食業界にも大きな影響があり、バイローカル運動など、地元消費で経済を循環させることや地産地消の重要性など、改めて気付かされたことも多い。アフターコロナをどう過ごしていくのか、いま県民一人ひとりが「和歌山」について考える時なのかもしれないと考えている。「今回を機に、まずは地元の人に和歌山の良さを再認識してもらい地域活性につなげていきたい。そして県外へも広く魅力を発信していきたい」と、吉田さんの挑戦は続く。

 

地域への思いを語る吉田社長

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