重症化の兆し見逃さない 日赤のコロナ対応

古宮伸洋医師 神戸市出身。2000年に北海道大学医学部卒業後、東京都立墨東病院、国立感染症研究所などで勤務後、14年に同センターに着任。同年には西アフリカでエボラ出血熱、17年にはソマリアでコレラ救援を行う。厚生労働省、WHO、JICAなどのコンサルティング業務にも携わる。5月1日、感染症内科部長に就任。

古宮伸洋医師 神戸市出身。2000年に北海道大学医学部卒業後、東京都立墨東病院、国立感染症研究所などで勤務後、14年に同センターに着任。同年には西アフリカでエボラ出血熱、17年にはソマリアでコレラ救援を行う。厚生労働省、WHO、JICAなどのコンサルティング業務にも携わる。5月1日、感染症内科部長に就任。

感染症指定医療機関として、新型コロナウイルス患者を受け入れる和歌山県和歌山市の日赤和歌山医療センター。感染者数が再び増加に転じ緊張が続く中、最前線での対応や院内感染防止策について、感染症内科部長の古宮伸洋医師(46)に聞いた。

――新型コロナウイルスの特徴や他の感染症との違いは?

症状に幅があることが挙げられます。全く症状が出ない人から軽い風邪のようなもの、重症の肺炎、最も重症になると多臓器不全になるなど幅があります。若年層は無症状から軽症で済む場合が多いですが、中高年から加齢するに従って重症化する傾向が顕著なのが特徴と言えます。

 ――未知のウイルスに対し、どのような対応をしてきたか。

当院は2010年に、エボラ出血熱やSARS(サーズ)、MERS(マーズ)などの特殊な感染症に対応する「感染症指定医療機関」の指定を受けました。専用の病床は8床あり、排水が独立し、陰圧というウイルスが外に漏れ出ない特殊な空調設備を備え、病室まで3重の扉がある構造になっています。また感染症内科があるのは全国でも珍しく、感染症専門医はもちろん、感染管理認定看護師、感染制御専門薬剤師、感染制御認定臨床微生物検査技師などエキスパートがそろっています。設備のハード面と人材のソフト面を備えており、現在のところ院内感染は起きておらず、患者さんをしっかり治療できる体制で受け入れています。ただ気を緩めずに不測の事態にも備えられるよう常に準備していきたいです。

 ――治療に関して大変なこと、意識していることは。

ほとんどの感染症は標準的な治療方法や薬が確立されていますが、この感染症は今の時点では何が一番良い治療か、はっきりしていません。これまでの治療経験と最新情報の収集によって、患者さん一人ひとりにベストな治療を提供できるよう日々アップデートしています。目の前の患者さんにどういった治療が良いか、常に患者さんの状態を観察し、重症化の兆しを見逃さないようにしています。

 ――県内でも感染者が再び増加している。私たちが生活をする上でどんなことに注意すべきか。

感染しやすい条件である3密を避けることがとても重要です。3密の環境下でマスクを外して会話したり、飲食したりする時間が長いとリスクが高まると思います。そうした場面を避けて、しっかり手洗いをしてほしいですね。

――今回の感染症の見通しについてはどのように考えているか。

すぐに、このウイルスを抑え込むのは難しいかもしれません。皆さんの予防行動によって医療が破綻しないようなレベルで抑えながら対応していくしかないと思います。予防方法など正しい情報を知れば知るほど、感染のリスクを抑えることができます。感染症指定医療機関として今後も(ホームページなどを通じて)情報発信に努めていきたいですね。

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