鳥獣害対策「僕らの畑は僕らで守る」 田辺市上芳養地区「TEAM HINATA」の挑戦

二階 俊博

今年は和歌山県内において、現時点では大きな台風被害もなく、農作物の生産者の皆さまにとっても消費者の皆さまにとっても、これからの収穫の季節が一段と楽しみになってまいりました。先日、地元に帰った際に収穫されたばかりの「極早生ミカン」を頂きましたが、皮をむいた時の何ともいえない甘酸っぱい香りと、例年以上に甘みの濃い味を堪能しました。やはり、和歌山のミカンは日本一、世界一おいしいと確信しました。愛情込めて生産されている農業関係者の努力に対し、敬意と感謝の気持ちを感じながら、この豊かな和歌山県の農業をいかに次の世代につないでいくかを私たちは真剣に考えなければなりません。
日本全国で農業を取り巻く環境は決して楽観できる状況にはありません。「自然災害」「病害虫」「高齢化」「後継者育成」「耕作放棄地」「スマート農業推進」等々、さまざまな課題が顕在化してきています。中でも、全国的規模で深刻な課題は「鳥獣害対策」です。私自身、これまで自民党・鳥獣捕獲緊急対策議員連盟の会長として、鳥獣被害防止特別措置法の改正を通じ、捕獲従事者の負担軽減や電気柵の安全対策、ジビエの推進等に取り組んでまいりましたが、地域の若手農家の奮起により、この困難な課題を克服しつつあるのが田辺市上芳養(かみはや)日向(ひなた)地区にある「TEAM HINATA」の取り組みです。
「上芳養から鹿が消えた」という話を聞き、私は8月に現地を訪問し状況を視察させていただきました。
農家が苦労して育てた農作物を鹿や猪に食べられてしまう。地域全体が悩みを抱え、農業を諦める農家も増えていた中、「TEAM HINATA」は「僕らの畑は僕らで守る」を合言葉に立ち上がりました。まさに「自助」の精神で始まった取り組みは、「共助」として地域の農家を巻き込みながらチームを形成し、農家自身が狩猟免許を取りチームで捕獲を進めていきます。しかし、鳥獣といえども命を粗末にしたくないという気持ちから、「公助」の協力を得て解体処理施設「ひなたの杜」を誘致します。そして、ついにはその取り組みを聞いた同地出身のフランス料理シェフが地元に戻り、ジビエレストラン「『Restaurant Caravansarai(キャラバンサライ)」をオープンさせるに至りました。私も地元の真砂充敏市長に案内いただき食事をさせていただきました。地元産の鹿肉ステーキは色鮮やかで、やわらかく調理された素晴らしい一品でした。ヨーロッパではジビエは高級食材として取り扱われており、インバウンド復活後には海外のお客さまからも評価が期待できそうです。その他、魚・野菜・果物など、地元産にこだわった料理を通じ、故郷・和歌山の豊かな恵みを存分に感じることができる素晴らしい空間でした。
現在「TEAM HINATA」は株式会社日向屋として、鳥獣の捕獲に限らず、地域の農作業支援や加工品の製造・販売も行っています。代表を務める岡本和宜さん(41)は鳥獣害対策について、「現在、年間約120頭を捕獲し、食用として流通させています。活動を始めて明らかに鳥獣害は少なくなった。命を頂く重みを感じながら、地域の厄介者が『ごちそう』に生まれ変わり、みんなを笑顔にしたい」と語ってくれました。
「TEAM HINATA」の挑戦する気持ちに心から賛辞を贈ります。ともに力を合わせて頑張りましょう。

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