米中対立の狭間の外交戦略 菅内閣の改革を一丸で後押し

世耕 弘成

第203回臨時国会が召集されました。新型コロナウイルス対策をはじめとする重要な法案の審議が予定されています。
私は10月29日に開かれた参議院本会議で、自由民主党・国民の声を代表して登壇し、菅総理大臣の所信表明演説に対し30分間、国民生活に関する14問の質問を行いました。
12月5日までの会期中、私は参議院自民党幹事長として引き続き党内をしっかり取りまとめ、必要な政策がスピード感をもって実施されるよう、円滑な国会運営に全力を尽くしてまいります。
代表質問では、米国の次期大統領について、菅総理の見解を求めました。
日本と米国は自由と民主主義の基本理念を共有する同盟国であり、これまでと同様に、わが国にとって最重要の2国間関係であることに変化はありません。
そして今後は、米中両大国の軋轢がますます強まることが想定されます。米国は日本にとって唯一の同盟国であり、米国抜きの日本の安全保障は考えられません。また、急速に成長する大国であり、最大の貿易相手国である中国との関係も軽視できるものではありません。米中対立の狭間で日本が米国と連携を強めながら、中国とどう向き合っていくのか、菅外交の真髄が問われます。安倍前政権において日本は日米同盟の強化を最優先に、価値観を共有する国々との連携を強める一方で、中国に対しては、わが国固有の領土領海に関しては一歩も譲らない断固たる姿勢を示しました。中国を排除するのではなく、中国が国際社会のルールを守った上で、日米EUなどが構築する枠組みに参加するよう促すという戦略で臨んできたのです。
中国が進める一帯一路についても、過剰債務で相手国を縛り付ける行為や、軍事利用について厳しく対応する一方で、途上国が真に必要とするプロジェクトについては、第三国における日中企業間協力などを通じて、日本も参画していく必要があります。このように高度な戦略性と絶妙なバランスが求められるのが対中外交です。
一方で、政治や安全保障問題と経済を分けて考えるという現実的対応は難しくなってきています。すでに米国は通信網に中国製機器を使用するリスクを訴え、5Gネットワークなどから中国製品を排除することを目的とした「クリーンネットワーク」計画に参加することを同盟国に求めています。日米の信頼関係と円滑な情報共有を維持するためには、真剣に受け止めざるを得ません。しかし、中国製通信機器排除はサプライチェーンでつながる日本の製造業に深刻な打撃を与えかねません。日本政府は今後、俯瞰的、戦略的に対応し、経済・技術面も含めた国家安全保障体制、情報収集体制をより一層強化していくことが重要です。
日米両国で政権が新体制となります。
安倍前総理は首脳同士の個人的信頼関係をテコに具体的プロジェクトを動かしながら、各国との関係を前進させるスタイルでしたが、私は、菅総理もそのスタイルを継承し、手腕を発揮されると確信しています。
そして、政治家の能力には内政も外交も区別がないと考えています。就任直後から菅総理の迅速な決断が続き、「デジタル庁創設」、「行政・規制改革」、「携帯料金引き下げ」、「不妊治療保険適用」、「地銀再編」などの政策が、既に具体化に向け進みはじめました。
「前例に囚われず仕事を前に進める」という総理の強い思いが改革を前進させていることを評価し、われわれ、参議院自民党も一丸となって、その取り組みを全面的に後押しするとともに、政府が誠実・丁寧・謙虚な対応をしていくようしっかり求めていきます。

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