二十八宿アストロツアー 加太で実証事業

和歌山県和歌山市の加太観光協会(稲野雅則会長)は、友ヶ島周辺の海上で古代東洋の星座「二十八宿」を鑑賞する「アストロツアー」を柱とする観光クルーズの開発を進めている。宿泊客の増加を図る取り組みの一環で、観光庁の2020年度実証事業に採択され、コースや費用対効果などの検証を行っており、来年度以降の実施を目指す。

アストロツアーは、観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業に採択された「加太Astro&Healing事業」の取り組みの目玉。東経135度、日本標準時子午線が通る海の上から、満天の星を解説付きで楽しむ。

プログラムは和歌山大学観光学部の尾久土正己教授らと協働で開発し、数字の「28」がポイントとなっている。

東洋天文学には、天球上で月が通る「白道」を28に分けた「二十八宿」の考え方があり、7~8世紀の高松塚古墳やキトラ古墳の壁画にも記されている。一方、加太地区は日本遺産に認定されている葛城修験の修行場「葛城二十八宿」が始まる地域であり、古代から日本文化に影響を与えてきた天空の道、地上の道の両方に「28」の数字が共通している。

これを観光資源として生かし、夜に実施するアストロツアーとすることで、海水浴などのシーズン以外にも宿泊で訪れる観光客を増やす目的がある。移動は加太港から片道10~15分、全体で90分程度のプログラムを予定している。

実証事業に使っている船は、RIB(リジット・ハル・インフレータブル・ボート=複合型ゴムボート)。高速で安定した走行ができる特徴があり、日本では海上保安活動や救助艇などに活用されているが、クルーズなど一般への利用は進んでいない。

加太観光協会は、青森県の十和田湖でRIBを観光に利用しているグリランド(同県十和田市)と11月30日に包括連携協定を結び、実証事業のためにRIBを借り受けた。

12月21日には事業関係者へのお披露目クルーズを行い、尾花正啓市長、加太地域活性化協議会の尾家賢司会長、稲野会長らが乗り込んだ。

安全性の確認などから、この日は昼間の実施。葛城二十八宿の第一番経塚がある虎島や、標準時子午線が通る場所など加太の海の魅力を味わった。

尾花市長は、RIBの乗り心地を「波の上を飛んでいくようで迫力がある」と話し、「夏場だけでなく、和歌山の海の魅力を知ってもらえる。友ヶ島をさらに生かし、観光の幅も広がる期待がある。魚の販売などにもつながればいい」と期待を話した。

実証事業は来年2月末までの予定で、ルートや安全に運航するための基準、解説の内容などを細かく検証し、課題の解決を図るとともに、船の操縦者やガイドの育成などにも取り組んでいく。

稲野会長は「地域で何年も地道な取り組みを続けてきた。二十八宿が重なる他にはない資源があり、RIBの活用も先行的な取り組みになる。実証事業を成功させ、本格的な実施を実現したい」と話している。

RIBを体験した尾花市長㊧ら

RIBを体験した尾花市長㊧ら

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