和歌山大学硬式野球部監督 大原弘さんに聞く

子どもの動機を強める

新型コロナウイルス禍が続く中、受験生は目指す進路に挑戦する緊張に加え、感染症の不安に向き合うことを余儀なくされている。和歌山大学硬式野球部監督で、学習塾業界に30年以上身を置き、青少年の教育に携わっている大原弘さん(55)に、かつてない特別な受験シーズンを迎えた子どもたち、保護者や周囲で支える大人へのエール、今の状況をどのように捉えるかのヒントなどを聞いた。

【プロフィル】和歌山県和歌山市出身。2008年から和歌山大学硬式野球部監督。就任当時の近畿学生野球連盟3部から1部昇格を果たし、17年春に初のリーグ優勝、全日本大学野球選手権8強に導く。本業は、学習塾運営会社で30年以上にわたり小中高校生の教育に携わっている。

【プロフィル】和歌山県和歌山市出身。2008年から和歌山大学硬式野球部監督。就任当時の近畿学生野球連盟3部から1部昇格を果たし、17年春に初のリーグ優勝、全日本大学野球選手権8強に導く。本業は、学習塾運営会社で30年以上にわたり小中高校生の教育に携わっている。

 

―コロナ禍が長期化している今をどう見ているか。

最初の頃とは少し違い、大変な中でも前向きに捉えることを、皆さんが考えるようになっているのではないか。

和歌山大学野球部では昨年4月に活動自粛となった時は、学生たちも不安の方が圧倒的に多く、状況を受け入れながら、やれることをやろうと話をした。

今また、部活動はストップしているが、学生たちは自分が何をすべきかを前向きに考えられるようになってきた。自粛といっても、われわれ自身が止まっていることではない。

日頃は見えていないところを見ていくことがすごく大事。少年野球の様子を見に行くと、練習している子どもたちがとても楽しそう。以前は当たり前のようにやっていた、ボールを追い掛けることに喜びを感じている。

コロナ禍の中で、止まっていることばかりがクローズアップされるが、その中でできている練習や勉強の存在は、子どもたちにとって大きい。スポーツや学びが持っているパワーを感じる。

 

―学習環境の変化への対応は。

オンライン学習を使う場合も、子どもたちへのヒューマンタッチの部分をしっかり考え、声掛けやモチベーションを高めるといったことが大事になる。

宿題は習ってから早くする方が効果が出る。今までは、いつ、どれくらいの時間をかけてしたかは分からなかったが、オンラインなら時間が把握できる。

子どもたちが管理されているみたいになると良くないが、モチベーションに変えるツールだと考えると、例えば週に1回塾に来る子どもが授業の翌日に宿題をしていると分かれば、そこを褒めることができる。オンラインの使い方次第で、ヒューマンタッチの部分が効果的になり、保護者の安心にもつながる。

また、対面の指導ではマスクで口元が見えず、子どもたちは先生の表情を読みにくい。子どもから良い答えが出ても、先生がニコッと笑っているのは隠れてしまうので、拍手やジェスチャー、声の強さなどで反応してあげないと。

 

―子どもたちの意欲をどのように引き出すか。

「やる気」の構造を知っておくといい。一つは「接近動機」。目標を高く持ち、そこに接近したいから努力する。その反対が「回避動機」。不合格になりたくない、テストへの不安から頑張るといったこと。

もう一つは「親和動機」。例えば友達関係で「○○さんもやるから私もやる」という動機のこと。

やる気に対する指導者の仕事は「動機付け」。子どもには絶対に動機があるので、それをいかに強めてあげるか。

勉強でもスポーツでも、保護者が言ってもしないのなら、誰から言えば子どもはOKになるのか。保護者だけでなく、周りの大人がうまくつながって、子どもが頑張れるように上手にアプローチすることが大事だ。


コロナ禍の受験対策 環境、メンタルの両面支援

新型コロナウイルスの感染拡大は、長期の臨時休校やオンライン授業活用への急速な転換など、教育の現場にも大きな環境の変化をもたらした。11都府県に2度目の緊急事態宣言が発令され、感染リスクへの不安が高まったまま受験シーズンを迎える中、全国の学習塾への調査から、オンラインの活用拡大、増加が予想される自主休校へのサポートなどの対応が見えてくる。
調査は「コロナ禍での冬期講習・受験を見据えた対策」に関するもので、㈱POPER(東京都)が提供するスクール専用業務管理&コミュニケーションアプリ「Comiru(コミル)」で昨年11月に実施し、有効回答数は162。

授業形態について、現在と新型コロナの感染者数増加が続いた場合をそれぞれ聞くと、「対面授業とオンラインの選択式」と答えた割合が、現在は46・3%、感染者増が続いた場合は68・6%だった。「オンライン授業のみ」の割合は、感染者増が続いた場合でも16・0%にとどまり、オンラインとの併用で両方の利点を生かそうとする学習塾が多いとみられる。

受験直前の時期に学校を自主休校させる保護者について、感染への不安から例年より「増える」と答えた割合は58・0%に達し、自宅や塾での学習に力を入れる子どもが増えるとの見方が強い。

塾側も、8割以上が自主休校する生徒への何らかの対策やサポートを検討している。内容(複数回答)の上位は「双方向オンライン授業」が48・8%、「オンライン自習室」が43・8%で、デジタル化によるサポートを充実させる塾が多い。次いで「子ども・保護者へのメンタルケア」が41・4%となっている。

コロナ禍で例年にない不安や緊張を余儀なくされている子どもたちに、学習環境とメンタルの両面からの支援が求められている。