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和歌山さんぽみちプロジェクト

実は同じ「不知火」と「デコポン」

県内で収穫される今が旬の「春柑橘(かんきつ)」の一つ「不知火(しらぬい)」を取り上げている。熊本県宇城市(旧・不知火町)で栽培が始まった不知火とうり二つである「デコポン」=写真。今週は、不知火とデコポンの違いを紹介したい。
不知火とデコポン。名前は異なるが実は同じ柑橘。デコポンは不知火の中でも糖度が13度以上、酸度が1度以下という基準を満たし、かつ、日本園芸農業協同組合連合会に属する全国のJAを通じて出荷されたものだけが名乗ることができる。
栽培が始まった地である熊本県の同連合会が、1991年からデコポンの名称で出荷を開始。1993年に商標登録を取得した。定められた糖度と酸度を「全国統一糖酸品質基準」と名付け、国内で唯一、商標登録を持つ果物である。
清見とポンカンを交配させて生まれた不知火であるが、開発当初は、へたの周囲にデコ(凸)を持つ見た目の悪さと酸味の強さから量産に不向きとされたという。しかし、日にちを置いて食べると酸味が消え甘味が増していることに気付き、栽培が本格化。デコを持つ特徴を逆手に取り、かわいらしささえ感じられるネーミングで人気を博していった。
3月1日、報道やカレンダーなどで「デコポンの日」という言葉を見聞きされた方がいらっしゃるかもしれない。デコポンが初めて出荷された3月1日を日本記念日協会が「デコポンの日」として登録。果物売り場を彩る春柑橘のシーズンの到来を人々に感じさせてくれている。
柑橘分野におけるプロモーション戦略の覇者ともいえるデコポン。地場産品のブランド化、農業振興に資する好事例として評価したい。(次田尚弘/和歌山市)