生まれ変わった音響 改修のMah!で演奏会

和歌山市西高松の県立図書館メディア・アート・ホール(Mah!)の音響改修が3月で完了し、生まれ変わった響きを楽しむコンサートが4月17日午後2時から開かれる。本紙毎週木曜連載「とらふすクラシック」の200回を記念し、コロナ禍で演奏機会が激減している演奏家への支援コンサートにも位置づけ、臨場感あふれる高音質ライブ配信も行う。収益は出演アーティストの活動支援に充てられる。

同ホールは、1993年に開館した全国的にも珍しい図書館併設のホールで、座席は300席。多目的ホールとして設計されたが、音楽会での利用が多く、同市出身のバイオリニストで東京芸術大学学長の澤和樹さんの監修で、これまでも音響の改善が行われてきた。

澤さんが2014年6月に同館の音楽監督に就任し、同ホールでのクラシック音楽の活動がさらに活発になる中、より抜本的な音響改修が実現。事業費約2700万円を投じ、昨年12月からことし3月まで工事が行われた。設計は㈱安井建築設計事務所(大阪市)、施工は㈱ワッグ建設(和歌山市吹上)が手掛けた。

 

きらびやかな音 演奏家にも喜び

天井と背面に反射板を設けることにより、反射音と直接音がバランスよく溶け合い、演奏者にも聴衆にも包まれるような響きが届くようになった他、ステージ床の補強によって低温の響きも豊かさを増し、床から音の振動を感じ取り、演奏者のパフォーマンスが向上する効果も期待されている。

3月下旬には和歌山市のピアニスト・宮下直子さんの試奏により、改修された音響の確認が行われた。ピアノの位置や可動式の舞台の高さなどを変えながら、専門業者が入念にチェック。宮下さんがピアノを奏でた瞬間、試奏に立ち会った関係者は一様に、劇的に改善されたホールの響きに驚きの表情を浮かべた。

宮下さんも「同じホールとは思えないほど、きらびやかな音になり驚きました。音楽専用ホールのような響きです」と喜びと興奮の様子で語った。

 

音楽文化の拠点に 活用の広がり期待

改修が完了し、同ホールは聴衆にとっても演奏家にとっても、ますます利用したくなる場所に生まれ変わった。

17年4月13日に連載が始まった「とらふすクラシック」では、今月1日の第200回に至るまで、演奏家が自ら執筆するという珍しいスタイルで、和歌山の多彩な音楽活動を伝え、同ホールでのコンサートも数多く取り上げてきた。

本連載の企画、執筆を手掛け、同ホールでのクラシック音楽振興に尽力している「和歌山ライブの歩き方」編集局長の岩橋和廣さんは「音響改修と連載200回のタイミングがぴったり合ったのは不思議。生まれ変わった音を聴き、お披露目コンサートが素晴らしいものになればとの思いを強くしています」と話す。

県立図書館には、紀州徳川家16代当主・徳川頼貞が収集した西洋音楽資料「南葵音楽文庫」が収められている。宮下さんは「和歌山の宝なので、和歌山の人がどうにか音にして伝えていかないと。より魅力的になったホールをどう使うかが大切ですね」と、今後の活用の広がりにも期待を寄せる。

本紙の津村周社長は「連載200回を記念し、音響改修のお披露目に合わせてコンサートができるのはうれしい。微力ながら、今後も紙面を通じて和歌山の音楽文化の発展を応援していきたい」と話している。

 

驚きの臨場感で 高音質ライブ配信実施

お披露目コンサートの出演は、宮下さん、村上真希子さん(ピアノ)、大守真央さん・中川知保さん(ピアノ連弾)、岡本万貴さん(フルート)と金谷幸三さん(ギター)のユニット「黒江万金堂」、砂原悟さん(ピアノ)、井岡潤子さん(ソプラノ)。

会場は150席。申し込みは電話(℡073・457・1011、午前10時~午後5時、木曜休み)で予約番号を取得する。会場で1000円以上の支援を呼び掛けている。
配信は、イヤホンやヘッドホンで聴くと驚きの臨場感が体感できるバイノーラル録音で行う。予約はミュージックマートから。アーカイブで1週間、視聴できる。

 

 

音響改修が完了したメディア・アート・ホールで(左から)岩橋さん、宮下さん、津村社長

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