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和歌山さんぽみちプロジェクト

三宝柑を使った「茶わん蒸し」

藩外不出の春柑橘(かんきつ)として200年の歴史を持つ「三宝柑」。前号では、豊かな香りと上品な味わいが楽しめる「三宝柑マーマレード」を取り上げた。マーマレードの他にも、茶わん蒸しなどの料理の器としての活用法もある。今週は三宝柑を使った茶わん蒸しを紹介したい。
まず、三宝柑の上部を包丁で横に切る。中心に近い位置で切ってしまうと、入れられる具材の量が少なくなってしまうので注意が必要。続いて上下に分かれた三宝柑の下の部分をくり抜く作業。外皮と実の間にナイフを入れ1周させる。その上で、大きめのスプーンを底まで差し込み、実を取り出していく。この際、外皮を破ってしまうと具材が漏れ出してしまうので慎重に行いたい。
器の形になった三宝柑の内部に具材を入れていく。主な生産地である湯浅地区などでは、同じ時期に旬を迎えるシラウオを入れることもあるというが、筆者は一般的な茶わん蒸しの具材を入れた。
卵にだしを加え注ぎ込めば、いよいよ蒸し器の出番。蒸し器に入れ、紙の落しぶたを乗せて25分程度蒸す。陶器の茶わん蒸しと違い、火の通り加減の確認が難しい。定期的に竹串を刺し、確認しながら完成のタイミングを待つ。蒸し上がれば、三つ葉などを添え、最初に切り取ってあった三宝柑の上部でふたをして完成。
食べてみて一口目に感じるのは、三宝柑ならではの香りと風味。だしの中に柑橘の風味が溶け込み、最後まで飽きの来ない味わい。手間がかかる料理ではあるが、三宝柑の魅力をふんだんに生かした、和歌山ならではの郷土料理を後世に残していきたい。
(次田尚弘/和歌山市)