手押し一輪車電動化 寺嶋さんらキット開発

ミカン農家らの農作業の負担を軽減しようと、和歌山県湯浅町出身の寺嶋瑞仁さん(28)が代表を務める㈱CuboRex(キューボレックス、東京都)は、一輪車を電動化する機具「E-CatKit(イーキャットキット)」を開発。農業の担い手不足や高齢化が進む中、寺嶋さんは「不整地での作業に、ぜひ活用してもらいたい」と呼び掛けている。

手押し車、ネコ車などと呼ばれる一般的な一輪車のタイヤを、同社のモーター付きタイヤに入れ替え、バッテリーを取り付けるだけ。

重い荷物の運搬を楽にするだけでなく、傾斜地やでこぼこ道も簡単に進めるという。速度は5段階に調節可能で、家庭用コンセントで3時間充電すれば約2時間動く。ミカン農家での運搬作業用としては3~4日分という。

開発のきっかけは、寺嶋さんが和歌山工業高等専門学校(御坊市)の学生時代、地元のミカン畑でアルバイトをしていたこと。約100㌔のミカンを積んだ一輪車を、木々に覆われた不安定な山道を運ぶのは重労働で転倒することもあり、腰などへの負担もかなり大きかったという。

農場の環境を変えるのではなく、既存の一輪車で作業負担を減らそうと考案。
基礎的な技術構築は、同社の副代表を務める嘉数正人さんのサポートを受けながら開発を進めた。ミカン農地という傾斜の強い環境での運用が求められるため、モーターの回転力を高めるのに苦心したといい、完成した際は「ようやくこれで高専時代に苦労したミカン産業に貢献できる」と感じたという。

本体は5㌔と軽量なため、女性や高齢者でも簡単に扱えるのが魅力。ミカン農家だけでなく、ウメやハッサク農家、建設現場でのコンクリートや砂利の運搬、養蜂場、墓清掃、遺跡発掘現場といったさまざまな産業でも使われている。実際に使った人からは「作業性が上がった」「収穫量が増えた」「疲れも減った」などの声が寄せられているという。

嘉数さんは「普段一輪を使い作業している人に、まずは体験してもらいたい」と笑顔でアピール。今後は催事などでの体験会なども開く予定という。

一般小売価格は14万3000円。全国のJAで取り扱っている。詳しい問い合わせなどは同社へメール(post@cuborex)、または各JAへ。

坂道や段差を楽に進める

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