下津のハモ、食文化守る 仕出し店の峯野さん

夏の風物詩の一つ、ハモ。和歌山県海南市下津町の戸坂漁港は古くからハモ漁が盛んで、地域にはハモの料理店が複数あったが、料理人や漁師の高齢化、後継者不足などによりハモを専門的に扱う店が減少している。同町丸田の仕出し店「ひさご」は、5年ほど前から本格的にハモ料理の提供を始めた。代表の峯野晴夫さん(71)は「若い世代にハモを料理してほしい。私自身もハモに関しては未熟だが、技術を伝えていければ」と思いを語る。

海南市では2015年に地元の有志グループが「鱧の街・菓子の街海南プロジェクト」を立ち上げ、地域おこしに取り組んでいるが、5年ほど前に3軒ほどあったハモの専門店も、今では1軒に。峯野さんは「ハモのまちとしてハモ専門店が減っていくのは忍びない」との思いから、店での提供を決めた。

ハモはさばくのが難しく、全身に硬い小骨が多いため、ハモの皮を残して身だけを細かく刻んでいく骨切りの技術が必要とされる。「下処理など手間がかかるが、ハモを知れば知るほど奥深さが分かる。実際に見ることで包丁の入れ方など細かなところが学べる」と峯野さんは話す。「天ぷらや丼など、単品からでもいい。自分でハモ料理をやってみようと思う人が出てきてくれれば」と願う。

同プロジェクトでは、地元の料理人を中心に年に数回、戸坂のハモの取れ方や扱い方、料理などを学ぶ勉強会を開催。地元以外の職人の参加も歓迎している。

同漁港のハモは、はえ縄漁法で水揚げし、暗いいけすに数日間入れる。そうすることでハモのストレスがなくなり身に落ち着きが出るという。「戸坂のハモはぬめりがあって傷が少なくとてもいい。皮の周辺がおいしく身に厚みがあるのが特徴」と峯野さん。

同店では一日一組限定で「夏の鱧料理」懐石を提供している。甘辛く炊いたハモのそぼろの「こけら寿し」や、ハモの子、うき、肝といった珍味など余すところなくハモを味わえる。峯野さんは「下津のハモを知ってもらえればれしい」と話している。

問い合わせは同店(℡073・492・2074)。プロジェクトに関しては一木旅館(℡073・492・0988)。

皮だけを残しつつ細かく包丁を入れる峯野さん

皮だけを残しつつ細かく包丁を入れる峯野さん

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