厳しい時間との闘い 県警が熱海被災地で活動

静岡県熱海市で発生した土石流災害で、6日から9日まで現地に派遣されていた和歌山県警広域緊急援助隊26人が10日、任務を終えて帰任し、現地での活動状況を報告。「一刻も早く救助を」との思いの一方で、捜索が難航する現地でのはがゆい思いを語った。

中垣亮中隊長(41)によると、6日午後5時ごろ現場に到着した隊員らは、大阪府警から引き継ぎを受け、翌朝6時から作業を開始。都道府県ごとに捜索箇所の割り当てがあり、同隊は同市伊豆山地区の中腹エリアを担当した。災害前は約10棟の家が建ち並ぶ地域だったが、家は全て流され、6部屋の2階建てハイツの2階部分だけが残された状態だったという。

クレーンやパワーショベルなどの重機を持ち込んでいたが、現場には車も入れず、同ハイツの2階部分の床に開けた穴から隊員が中に入り、スコップなどの工具を使って土砂をかき出しながらハイツの中を重点的に行方不明者の捜索にあたった。

2011年の紀伊半島大水害でも捜索活動に携わった中垣中隊長は、「土砂崩れという初めての現場で、水害よりも見通しが悪い土砂災害現場での捜索は非常に難航した。地面の底が見えて初めて人がいないということが分かり次に行けるのだが、土砂が多過ぎて上部だけしか見えていない中で、『もしかしたら人がいるかもしれない』というもどかしさをみんな感じていた」と話した。

2日目と3日目は、雨や小規模な崩落による二次災害の危険性があり、数時間作業を中断。少しずつ傾いていくハイツの中で、中垣中隊長は「時間との闘いだった」と振り返り、「この時期の暑さや長時間の作業を行う中で、われわれが倒れたら意味がないという緊張感を持ちながら、本当は夜中でも救助を続けたかった」と悔しさをにじませた。

いつどこで起きてもおかしくない自然災害だからこそ、中垣中隊長は「普段から住んでいる地形を確認しておくことが大切。災害の予兆があれば、早めに避難し、自分の身は自分で守ってもらいたい」とし、「『多分自分は大丈夫』と思わず、準備できることはしっかりしておいてほしい」と呼び掛けた。

 

泥とがれきが広がる被災現場(県警提供)

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