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和歌山さんぽみちプロジェクト

1玉2千円超えも「晩白柚」

前号では、気候変動の影響で栽培が進む、イタリア原産の「ブラッドオレンジ」を取り上げた。今週は「柑橘(かんきつ)の王様」「世界最大級の柑橘」と呼ばれる、一風変わった春柑橘「晩白柚(ばんぺいゆ)」を紹介したい。
晩白柚はマレー半島原産の柑橘でザボンの一種。直径20㌢、重さは2㌔程度とサイズが極めて大きいが、果肉は八朔などと変わらない程度の大きさで、皮が分厚いことが特徴。糖度は12度程度と甘味があるが果汁が少ないため、サクサクとした食感である。
歴史は古く、1930年に台湾から鹿児島県の果樹試験場に株が入り、熊本県の八代地方が栽培に適しているとされ、品種改良の後、今や八代市の特産品となっている。ことし6月には5㌔を超える歴代最大の晩白柚が収穫され、ギネス記録を更新。柑橘の王様の名にふさわしい記録が生まれている。
旬は2月から3月ごろだが、ハウス栽培のものは12月上旬に旬を迎える。目を見張るような立派さから、お歳暮の品として採用され、ハウス栽培のものは1玉あたり2千円を超える高級柑橘である。
果肉より分厚い皮の方が多い晩白柚は、皮を砂糖で煮てマーマレード状にする「ザボン漬け」に加工されることが多い。表皮の下にある白いスポンジ状のアルベドと呼ばれる部分は、栄養価が高く、砂糖の甘味との相性が良く、さらにその分厚さから、加工品としての利用価値も高い。
2017年の農水省統計によると、主な産地は熊本県(839㌧)、鹿児島県(28㌧)、大分県(8㌧)と九州地方での栽培が主であるが、和歌山県内でも栽培されている。
1玉2千円を超える高級柑橘。余すことなく活用できる晩白柚は、工夫次第で大きな可能性を秘めている。(次田尚弘/和歌山市)