青洲の精神を後世に 谷脇さんが本を出版

和歌山県紀の川市江川中の那賀地区公民館上名手分館長の谷脇誠さん(72)がこのほど、地元の偉人で医聖の華岡青洲についてまとめた著書を出版した。谷脇さんは「社会に尽くした青洲の精神が私たちと共に、いつまでも生き続けることを願っています」と話している。

タイトルは『医聖華岡青洲の生涯―社会を尽くす―』。谷脇さんはこれまで2012年度に『上名手の礎』、19年度に『上名手公民館の歩み―2010年度~18年度』を出版し「公民館として地元のことを調べ、残し、伝えたい」と取り組んできたという。

青洲は世界で初めて経口全身麻酔薬の「通仙散(つうせんさん)別称・麻沸散」を考案し、全身麻酔で乳がん手術を行って成功したことで知られている。

著書の前半では青洲の志や業績を記した。難病を治す医者を志して長年の工夫・実験を経て通仙散を開発し外科治療に専念したこと、内科を取り入れて外科治療をするなど「活物窮理」(理を極めて人を生かす)という理念を打ち立てたことなどを紹介している。青洲は診療所と学校を兼ねた「春林軒」で全国から来た医師人材を育成し、多くの患者を治療。難病である乳がんの切開手術は153回(143人)に上るという。

著書の後半では、青洲の偉大さとして近代外科の開拓とその理念の確立のために尽くしたこと、大自然と調和し生涯にわたって平山で生活するなど、自然界に生かされて生きたことなど、「社会に尽くす」という観点から、これまで発表されていない谷脇さん独自の見解で記している。また青洲の心の支えが弘法大師空海であり、青洲の弟の良応や乗如上人から教えを学んで自身の人生観に生かしたこと、空海と青洲との共通点にもふれている。

谷脇さんは「史料をもとに青洲の生涯を、社会に尽くすという観点からまとめた。青洲は偉業とともに謙虚でおごらない徳の高い人格者として郷土や世の人々に多大な社会貢献をした。独自の観点からまとめたので多くの人に見てもらえればうれしい」と話している。

冊子はA4判、215㌻。地元の上名手地域全戸450戸や近隣の小中学校、高校、市内図書館などに配布する。希望者は数に限りがあるが送料負担で進呈する。問い合わせは谷脇さん(℡0736・75・3144)。

「史料をもとに独自の観点からまとめた」と谷脇さん

「史料をもとに独自の観点からまとめた」と谷脇さん

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