小野田寛郎さんを映画化 海南市で試写会

太平洋戦争の終結後もフィリピン・ルバング島に潜伏し、約30年後の1974年3月に帰還した旧日本陸軍少尉・故小野田寛郎さんを描いた映画『ONODA一万夜を越えて』の試写会が19日、小野田さんの故郷・和歌山県海南市の海南ノビノスで開かれた。小野田さんの青年期を演じた俳優・遠藤雄弥さん(34)は「人としての在り方を考えさせられる作品。お客さまの心に響いたらと思う」と語った。

小野田さんは旧亀川村(現海南市)生まれ。1944年11月に陸軍中野学校二俣分校を卒業後、派遣されたルバング島でゲリラ戦を命じられ、終戦後も任務解除の命令を受けられないまま、約30年にわたりジャングルで戦いを続けた。

同作はこの史実を基にアルチュール・アラリ監督が手掛けた。「死ぬ権利はない」と命じられた小野田さんが、過酷な任務を遂行する中、仲間を失い、たった一人となり、青年旅行者との出会いをきっかけにジャングルを出るまでの壮絶な日々を描いている。

小野田さんを演じたのは青年期が遠藤さん、壮年期が津田寛治さん。この他、嶋田久作さん、イッセー尾形さん、仲野太賀さんらが出演。

フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の国際共同製作で、ことしのカンヌ国際映画祭「ある視点」部門オープニング作品に選ばれ、高い評価を受けた。10月8日に全国公開が決まっている。

海南市での先行試写会は海南青年団体連絡会議(古田充司会長)が主催。

遠藤さんは舞台あいさつの前に小野田さんの本家筋の宇賀部神社を訪ね、父が小野田さんのいとこに当たる小野田典生宮司(71)の案内で、小野田さんが潜伏時に肌身離さず持っていた「千人針」、直筆の「不撓不屈」の書などゆかりの品々に見入った。

和歌山を初めて訪れた遠藤さんは「小野田さんのことを取材し、演じていても、故郷をとても大切にしている方だと感じていた。海南は日本らしさが残る、心洗われるような土地で、ここで小野田さんが生まれ育ったのかと感慨深い思いがする」と話した。

小野田宮司は、「戦争は人と人が殺し合う究極の悪。絶対に始めてはいけない」との小野田さんの言葉を紹介し、今回の映画を見て「映像にすることで(小野田さんの)嘆きが解き明かされたように思う。生前話していたことがよく理解できた」と語った。

試写会では、約100人が故郷の先人の物語に拍手を送り、映画のヒットを祈念して鏡開きや記念撮影が行われた。

遠藤さんは舞台あいさつで、役づくりのために11㌔減量したことなど撮影の苦労話を明かし、W主演の津田さんもビデオメッセージを寄せ、「和歌山県、海南市の皆さんと映画を盛り上げていきたい」と呼び掛けた。

小野田さんの写真やゆかりの品々の前で遠藤さん㊨、小野田宮司

小野田さんの写真やゆかりの品々の前で遠藤さん㊨、小野田宮司

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