木と対話し家具作り アレン・ドミニクさん

和歌山県紀美野町に住むイギリス人カーペンター(家具職人)のアレン・ドミニクさん(51)は、少子化で廃園となった元幼稚園を利用した「工房アレン’S」で、主に天然無垢材を使用し、くぎを使わない伝統的な「ほぞ組」という製法でオーダーメード家具を手掛けている。

「木と手作業が好き」と話すアレンさんは、温度や湿度によって伸縮する無垢の木は、くぎで固定するとひびや反り返りの原因になるため、木に凸部と凹部を作り、かみ合わせることで木をつなぐ「ほぞ組」を採用。木材の伸縮によって生じる力をうまく逃がせる同製法であれば、木に負担をかけることなく、長く愛用できる1点ものに仕上がるという。

工房に置かれた椅子は、自身がほぞ組で作ったといい、「200年はもつ」と笑顔。「同じものは作りたくない」とのこだわりから、一つとして同じものがない天然無垢材を前に、木と会話を楽しむかのように、何を作ろうかと考えるという。「椅子がいいのか、テーブルがいいのか、木を見れば木が教えてくれる。関係を築きながら考える時間が好き」とアレンさんは言う。

イギリスのノーフォーク州出身のアレンさんは、カーペンターとして働きながら世界中を旅していた際、ニュージーランドで衣美(えみ)さんと出会い、結婚を機に2006年に来日。衣美さんが海南市出身であったことから、同市で英語の臨時講師として働いていたが、知人から依頼された陶芸窯と作業場の建設をするうちに、「カーペンターの仕事をしたい」との思いが強くなり、同町で家具職人として起業した。

自宅兼工房の大きな窓からは、山々が望め、自然に囲まれた庭では家庭菜園や鶏とのスローライフを楽しむ。「毎朝、工房の窓から景色を眺めては、幸せを感じている」と話す。

現在はオーダーメード家具をはじめ、スピーカーや古民家のリフォーム、建築など、幅広く対応。築150年の茅葺き屋根の古民家をリノベーションしたこともあり、「大変だけれど楽しい」と大きなやりがいを感じている。昨年リニューアルオープンした和歌山市明王寺の道の駅「四季の郷公園」のベーカリーには、アレンさんが一から設計し手作りした石窯が置かれ、毎朝自家製パンが焼き上げられている。

「誰にもできないような難しい仕事をしたい」と話すアレンさんの今後の目標は、自宅の庭に作ったハンドメードの石窯を、今度はレンガから手作りすること。すでに泥から手作りされたレンガが並ぶ庭先で、「窯が完成したら、イングリッシュマフィンやソーセージロールを焼きたい」とイメージを膨らませている。

ほぞ組で手掛けた椅子に座り笑顔のアレンさん

ほぞ組で手掛けた椅子に座り笑顔のアレンさん

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