有吉佐和子記念館 邸宅復元し来春オープン

和歌山市出身で、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』などで知られる昭和を代表する小説家・有吉佐和子(1931~84)の邸宅を復元し、記念館とする工事が、南海和歌山市駅近く(伝法橋南ノ丁)で進んでいる。来年3月の完成を予定し、市の玄関口に新たな文化施設が誕生する。

有吉は同市真砂丁(現吹上1丁目)に生まれ、父の転勤に伴い、インドネシアに移住。1945年、和歌山に疎開し、県立和歌山高等女学校に通う。東京女子短期大学部英語科在学中に雑誌「演劇界」の「懸賞俳優論」に入選し、56年に「地唄」が芥川賞候補となって文壇に登場すると、翌57年には「白い扇」が直木賞候補となった。

『紀ノ川』を執筆後、演劇を学ぶためにニューヨークに留学。以後、海外各地を回りながら、紀州を舞台にした『助左衛門四代記』『有田川』『日高川』『華岡青洲の妻』を刊行。『海暗』『出雲の阿国』『恍惚の人』『複合汚染』などの作品も社会に大きな反響を呼んだ。84年、都内の自宅で急性心不全のため53歳の若さで急逝した。

ことしは有吉の生誕90年の節目の年に当たり、きょう3日には顕彰イベント「ふるさとと文学2021~有吉佐和子の和歌山」が完成間もない和歌山城ホールで開かれるなど、有吉の業績を改めて評価する機運が高まっている。

復元が進められているのは、有吉が1961年から亡くなるまで暮らし、東京都杉並区にあった邸宅で、木造2階建て、延べ床面積は185・51平方㍍。

数々のベストセラー作品を執筆した寝室兼書斎や、茶道、三味線、鼓を学び、たしなんだ和室などを再現する他、作品を紹介し、有吉の生き方や魅力を感じることができる展示室などを整備する。物品販売や飲食の提供など店舗として活用するテナントスペースも設ける。

10月5日には復元工事の安全祈願を行い、市、施工業者などの関係者らが出席。6日に着工した。復元の総工費は約1億2000万円となっている。

近隣の市民図書館2階には、有吉の作品や関連資料を紹介する「有吉佐和子文庫」が設置されており、文学ファンらが両施設を訪れることも期待されている。

記念館展示室のイメージ(和歌山市提供)

記念館展示室のイメージ(和歌山市提供)

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