文化奨励賞の2人が講話 大桑財団の表彰式

公益財団法人大桑教育文化振興財団(大桑弘嗣理事長)は、2021年度大桑文化奨励賞に選ばれた和歌山市出身のピアニスト・中谷政文さん(38)、岩出市の根来寺根来塗師・池ノ上辰山さん(62)の2人の表彰式と、文化、教育、スポーツ活動に対する援助の目録贈呈式を和歌山市のホテルアバローム紀の国で行った。

同財団は㈱オークワの創業者・大桑勇が1993年に設立。文化・芸術分野で優れた活動に取り組む県ゆかりの人に贈る同奨励賞をはじめ、毎年、県内スポーツ選手への競技力向上援助や奨学金給付、市町村対抗ジュニア駅伝競走大会援助、学校への図書の寄贈など、文化、教育、スポーツに関わる活動に対して援助を続けている。

式典で大桑理事長は、財団創立からこれまでに給付した奨学金の総額が約5億9000万円に達していることなど、地域に根差した財団の活動を紹介し、「これからも皆さまの声に耳を傾けながら、地域社会に貢献できる活動を続けていきたい」とあいさつ。本年度の受賞者、援助対象者の取り組みをたたえ、賞状や目録を手渡した。

文化奨励賞の2人は受賞を記念して講話を行った。

中谷さんは、これまでピアノを続けてこられた理由について、人生のターニングポイントで素晴らしい師匠との出会いがあったとし、「視野が狭くなってしまうところに、音楽の新しい感覚、美意識を吹き込んでくださった」と感謝した。

音楽の世界では自分の欠点ばかりに目がいってしまい、才能に見切りをつけてしまうこともあるとしながら、中谷さん自身は負けず嫌いの性格から、今はできなくても、いつかできるようになると思い続けて進んできたことを紹介。

指導に当たっている後進には、美意識などとともに忍耐強さも伝えていきたいと語り、記念の演奏も披露した。

池ノ上さんは、自身が技法を復興させた約600年前の室町時代の根来塗りと、現在一般的に知られている漆器との違いを、画像や実物の漆器などを示しながら解説した。

一般的な漆器は、使う中で欠けや傷ができると、その部分から水が浸透して塗りが剥離し、下地の木が見えてしまうなど、長い使用に耐えないことが多い。一方、根来塗りは木の上に漆を塗り重ねる強い構造であることから、使い込んでも剥離せず、表面の朱塗りの下から黒い塗りが現れ、味わい深さを増していく。

池ノ上さんは「傷付いた姿こそが根来塗り。使うほどに格好良くなる」と魅力を話した。

 

ピアノを演奏する中谷政文さん

 

根来塗りの特長を話す池ノ上辰山さん㊨

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