ブドウハゼの化粧品 りら高生が開発、販売

和歌山県紀美野町真国宮にある、りら創造芸術高校の生徒たちが、和ろうそくなどの良質な原料として、町内で広く栽培される「ブドウハゼ」のロウと、町木である「榧(かや)」を香料に使ったオーガニック化粧品「キノミノリ」を開発。100個限定で販売を始めた。生徒たちは「地域の産業を盛り上げられれば」と意気込んでいる。

ブドウハゼはハゼノキが突然変異した和歌山発祥の品種。果実が通常のハゼノキと比べて大きく、ブドウの房のように実ることから名付けられた。ハゼノキの果実から採れる木蝋(もくろう)は、和ろうそくやおしろいなどの原料となる。

戦前に県指定天然記念物となっていたが、再指定の申請がなく自動的に指定は解除されていた。2017年に同校の生徒が枯死したとされていた原木を発見し、20年1月に県天然記念物に再指定された。

地域おこしなどに取り組む同校の部活動「りらファクトリー」に所属する生徒らは「再指定を実現させた先輩たちが卒業し、このままでは、また忘れ去られてしまうのでは」と危機感を抱き、ブドウハゼの価値を高め活用できることはないか話し合い、化粧品の商品化を思い付いた。

実からの製蝋(せいろう)は、海南市の吉田製蝋所に依頼。同社は伝統的な製法で、天然のブドウハゼの素材を生かした最高品質の木蝋を生産している。化粧品として使用するには木蝋から不純物を取り除いた「白蝋(はくろう)」にする必要があり、今回、同社は、木蝋を約2カ月かけて天日干しする白蝋の生産を77年ぶりに復活させた。

完成した化粧品は、かんきつ系の香りで、肌に塗ってもべたつかないのが特徴。パッケージのイラストは生徒が担当。商品名は紀州・紀美野の「紀」と「木の実」から「キノミノリ」と名付けた。

生徒たちは「商品にするのは、高校生では難しいのではとないかと言われていたが、さまざまな縁がつながり実現できた」と喜び、商品化の中心を担った3年の深澤野々花さんは「さまざまな人の協力でできた。商品になったことがまだ夢のよう。卒業前に完成できて良かった」と笑顔。3年の井遥香さんは「商品化をきっかけに、地域の産業として広がればうれしい」と話した。

県林業試験場特用林産部の坂口和昭部長も「完成は奇跡に近い。生徒の純真な思いが大人を動かした。地域産業の発展につながる」と期待を寄せている。

商品は100個限定、30㌘3500円。購入希望者はメール(lyra@lyra-art.jp)で。件名に「キノミノリ購入希望」、本文に名前、電話番号、購入希望個数を明記(1人2個まで)する。試験販売のため、購入は使用後にアンケート(ネット上で回答)を記入してくれる人に限る。問い合わせは同校代表電話(℡073・497・9111)。

「りらファクトリー」のメンバー(1列目中央が髙井さん、左が深澤さん)

「りらファクトリー」のメンバー(1列目中央が髙井さん、左が深澤さん)

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