IR整備申請、賛否は不透明 臨時県議会

和歌山県が和歌山マリーナシティ(和歌山市毛見)に誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)について、県議会臨時会が14日に開会し、当局は「区域整備計画」の国への申請に必要な議決を求める議案を提出した。仁坂吉伸知事は誘致の意義を改めて強調し、賛同を求めたが、県議には「(賛否は)半々ぐらい」「(議案が付託されるIR対策)特別委員会は反対が多いのではないか」などの見方があり、最終日の20日の採決で議決が得られるかは不透明な情勢となっている。

同計画によると、運営事業者の和歌山IR㈱は、県の公募で選ばれたカナダ系のクレアベストニームベンチャーズなどを中核株主とし、初期投資額は約4700億円。カジノの他、2万3000人以上収容の国際会議場や展示施設、日本の伝統文化などの魅力増進施設、客室2600室超のホテルなどを備える。

開業2年目(2028年度)に県に納入される入場料は約70億円、納付金は約290億円を見込み、納付金の25%を立地市の和歌山市に交付する。

同計画への立地市の同意は3月30日の和歌山市議会で得られており、4月28日が期限となる国への申請に必要な重要手続きは県議会の議決を残すのみだが、ここに至っても県議会の内外で賛否両論が渦巻いている。

民間では、県経済発展に大きな効果が見込まれるとして、県経済団体連合会などを中心に誘致賛成の働き掛けが県や県議会に行われている一方、市民団体「ストップ!カジノ和歌山の会」をはじめ、ギャンブル依存症増加の懸念や、収支計画が過大と疑問視する立場などから反対の意見も強い。

県議会でも、資金調達計画の裏付けが乏しいなどとして、賛成派と目されてきた自民党内からも計画への厳しい意見が相次いできた。

臨時会では、19日のIR対策特別委員会で藤山将材委員長を除く15人で採決が行われるが、複数の委員が反対多数で否決される可能性があると見ている。

20日の本会議は森礼子議長(自民)を除く40人で採決し、賛否が同数の場合は森議長の判断で決まる。自民以外の5会派(14人)は賛否が拮抗(きっこう)しているとみられ、一部の県議は「議決できるかは自民党次第だ」「自民の中でも反対派が広がっているようだ」などと話す。

こうした不透明な情勢を踏まえてか、14日の仁坂知事の提案説明では、IRの経済波及効果などを強調する一方、19年9月の県議会定例会で誘致を推進する決議が行われたことにふれ、「当局と議会が両輪でIR誘致を推進している姿勢を国や事業者に示すことができたことが大きな後押しとなり、今般の区域整備計画認定申請の段まで至れた」と、県議会へのけん制とも受け取れる発言もあった。

自民が賛否のどちらに傾くのか、IR対策特別委、本会議での採決の行方が注目される。

 

区域整備計画の申請に賛同を求めた仁坂知事

 


 

県も推進し決定を 定例会見で尾花市長

IR事業の立地市である和歌山市の尾花正啓市長は、14日にあった定例会見で「(市議会での議論を経て)同意した市としてはIRを推進していきたい。県も推進で決めていただければありがたい」とあらためて強調した。

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