和歌浦への思い筆に 松村さんが書を奉納

紀州東照宮(和歌山市和歌浦西)の大祭「和歌祭」が創始400年の節目を迎えるのを記念し、和歌山市出身の書家、松村博峰(はくほう)さん(57)は13日、和歌浦地区にある紀州東照宮と和歌浦天満宮、玉津島神社、三社に書を奉納した。

松村さんは昨年、「第8回日展」で通算20回目となる入選を果たし、2度目の特選を受賞。これを節目に「書道の聖地、和歌山に育てていただいた恩返しをしたい」との思いが強くなったという。

松村さんにとって和歌浦は、中学2年生の時に42歳の若さで亡くなった父親との思い出の場所。「父親の遊漁船があった和歌浦で登校前に釣りをし、放課後は船の手入れをしていた」と振り返り、自身の原風景ともいえる和歌浦が、美しい景観とともに復興することを願い、和歌祭四百年祭実行員会の中山勝裕実行委員長協力のもと、今回の三社への書の奉納が実現した。

このうち、学問の神様、菅原道真を祭る和歌浦天満宮には、道真が大宰府に向かう途中、海上の風波を避けるために船を停泊し、和歌の浦を望みながら詠んだ2首の歌を全紙(約69㌢×136㌢)に書き上げて奉納。

同天満宮で13日、奉納式が行われ、書の披露や、巫女(みこ)舞が奉納された。小板政男宮司が松村さんに感謝状と記念品を贈り、「天満宮の一生の宝として末代まで継承いたします」と喜びを伝えた。

松村さんが「道真の気持ちを表現するため、むせび泣くようなイメージの渇筆(かっぴつ)で書き上げた」という書は、同天満宮の社務所に展示されている。

また、玉津島神社には聖武天皇の詔(みことのり)を、紀州東照宮には徳川家康の教えを書き上げた書を奉納。松村さんは「三社それぞれに『この神社にこの言葉あり』といったものを選び、思いを込めて書いた」と話し、「和歌浦の発展に少しでも貢献できれば」と願っている。

 

小板宮司㊨から感謝状を受け取る松村さん

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