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和歌山さんぽみちプロジェクト

グレープフルーツに似た「河内晩柑」

 前号では、レモンイエローをした小さな柑橘(かんきつ)で、果汁が多く甘味を楽しめる「黄金柑」を取り上げた。今週はグレープフルーツのような味わいを楽しめる「河内晩柑(かわちばんかん)」を紹介したい。
 河内晩柑は直径約10㌢、重さ約400㌘と大きい柑橘。1905年ごろ、熊本県河内町で見つかった文旦の偶発実生とされる。偶発実生とは品種改良のように意図的に作られたものではなく、偶発的に親となる品種より恵まれた特性を持つ品種を指す。
 河内晩柑は栽培される地域によりさまざまな呼び名が付けられ、生産量日本一の愛媛県愛南町では「愛南ゴールド」、熊本県では「天草晩柑」、高知県では「夏文旦」と呼ばれる。同じ品種でありながら地域ごとにその名が異なるという珍しい品種である。
 特徴は「晩柑」の名が付けられるほど樹上で実る期間が長いこと。12カ月から15カ月程度実らせてから収穫し、貯蔵などせず、すぐに出荷を行う「木成り栽培」によるもの。寒さに弱く、気温が低くなると実を自然に落下させてしまうため、比較的温暖な地域でしか栽培できないという難しさもある。
 食してみるとグレープフルーツから酸味を取り除いたような味わい。種はやや多めであるものの、果汁がたっぷりで食べやすく、酸味が苦手な方でも食べやすい。
 旬は4月から7月ごろ。農水省統計(2018年)によると、生産量1位は愛媛県(約6600㌧)、2位は熊本県(約2700㌧)、3位は高知県(約160㌧)、4位が和歌山県(約80㌧)となっている。県内の主な生産地は有田川町、海南市、紀の川市となっている。
 河内晩柑は「和製グレープフルーツ」と呼ばれることもある品種。ぜひお試しいただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)