三男亡くした河原さん 全国巡り絵本を寄贈

急性脳症で3歳の息子を亡くした横浜市の河原由美子さん(38)が和歌山市を訪れ、息子を主人公に描いた自作の絵本『ママ、ぼくがきめたことだから』を3冊、県立図書館に寄贈。県立博物館でお話し会を開き、「子どもを亡くし、自分を責めているお母さんたちが、良い意味付けをすることで人生を前向きに過ごすことができれば」と話した。

青少年の健全育成などに取り組む市BBS会が主催。河原さんは2018年、急性脳症を患った三男を3カ月半の闘病の末、亡くした。医師から脳死と告げられた後も「どんなことをしてでも生き返らせたい」という強い思いがあった反面、徐々に弱っていく姿を前に、初めてなすすべがないことを体感。「本当に命がなくなっていくということを自分の子どもで初めて体験した」と振り返る。

深い悲しみに襲われ、鬱(うつ)のような状態に。「朝起きられない」「部屋を片付けられない」「ご飯を作れない」など、症状はさまざまだったが、特に「物忘れのひどさ」は恐怖を感じるほどだった。

忘れてしまわないように、何か形に残したいと絵本を制作。「息子が死んだのは自分のせい」と自責の念にとらわれていたが「もし寿命を3年と決めて生まれてきたのだとしたら、それを受け入れてあげないと理不尽」と考えることで生きるのが楽になった。

自身を含め、同じ経験をした人たちに「前向きに生きていく選択はできる」と伝えるため、「息子に言ってもらいたいこと」をしたためた絵本を20年に出版。

同時に子どもを亡くした人たちが集うコミュニティー「Twinkle‐mom」を立ち上げ、毎月、対面とオンラインで交流を図っている。「悲しさを分かち合うだけでなく、自分の人生を前向きに過ごせる母親が増えれば」との願いを込める。

三男が生きていれば7歳の誕生日を迎えるはずだった、ことし5月16日に47都道府県を巡る活動をスタート。命日の9月1日までに、各都道府県の図書館に同書を寄贈しながら、各地でお話し会を開く計画。

河原さんの話や絵本の朗読に耳を傾けた参加者らは「当たり前に育っていくのがいかに幸せなことか、改めて気付いた」「命ははかないけれど、命より重いものはない」などと話し、命の尊さについて考えていた。

自著の朗読をする河原さん

自著の朗読をする河原さん