ブドウハゼ収穫増へ 紀美野町で研修会

和ろうそくなどの原料となるブドウハゼの産業復活を目指す、和歌山県紀美野町の有志グループ「志賀野さみどり会」(藤垣成行会長)と、海草振興局農林水産振興部林務課は9日、ブドウハゼの生産技術の向上を目的とした研修会を同町西野の志賀野地区公民館で開いた。効率的で確実な接ぎ木技術や省力的で生産性の高い栽培管理技術の習得、生産量の増産に向けて期待がかかる。

ブドウハゼはウルシ科の樹木で、落葉小高木であるハゼノキの栽培品種の一つ。通常のハゼノキと比べて大きく、ブドウの房のように実ることから名付けられた。

ハゼノキの果実から採れる木蝋(もくろう)は、和ろうそくやおしろいなどの化粧品の原料となり、ブドウハゼは蝋の含有率が高く、品質が良いことから同町を中心に盛んに栽培されていた。

昭和初期ごろの最盛期、同町には30万本以上のブドウハゼの木が栽培されていたが、木は急斜面に多く採集には危険が伴い、生産者の高齢化や西洋ロウソクの普及によって産業は衰退していった。現在同町で栽培している人は1人しかおらず、木は200本ほどしかないという。

また、伝統の玉締め式圧搾法を用い、ブドウハゼ100%の蝋を作る製蝋所は全国でも海南市且来の「吉田製蝋所」のみ。「なくしてはいけない。なんとか産業を復活させたい」と、さみどり会が中心となりブドウハゼの生産に向けた取り組みを始めた。

研修会にはブドウハゼ生産者や関係者約50人が参加。県林業試験場特用林産部の坂口和昭部長(55)と和歌山ハゼ蝋再興グループ「TeamZENKICHI」メンバーの中西宣博さんが接ぎ木技術や穂木の採集について講義した。

藤垣会長は「ブドウハゼは接ぎ木がとても難しくうまくいかない。今一度、原点に戻り研修会を通して技術などを学びたい」と話す。

講義では、接ぎ木技術など県の研究状況やブドウハゼの生産拡大をリードし、接ぎ木活着率80%を超えるTeamZENKICHIの取り組みが報告された。

現場研修で、参加者らは同町国木原の大浦龍三さん(93)の敷地に自生する樹齢150年以上のブドウハゼの木から穂木を採集。穂木の選び方や保存方法を学んだ。所有者の大浦さんは「昔はよく木に登り実を取った。産業が復活したらええなあ」と笑顔。

その後、さみどり会メンバーが管理する同町釜滝にある台木に採集した穂木を接ぎ木した。坂口部長は「成功のこつは失敗すること」と話し、台木の樹皮を剥ぐ方法や穂木の切り方、接合の仕方、テープの巻き方などポイントを伝えた。接ぎ木を体験した植木関連の仕事をする向博史さん(60)は「穂木と台木の面と面を合わすのが難しかった。ブドウハゼの今後の可能性に期待したい」と話した。

同会や県は、今後もさらなる収穫量増を期待し、収穫しやすい低木仕立て技術の研究や接ぎ木の活着率上昇を目指す。

樹皮を剥ぐこつを伝える

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