地域ブランド向上へ 弁理士の室伏千恵子さん

和歌山市北桶屋町のコワーキングスペースcotowaで弁理士事務所「きのか特許事務所」を開いている室伏千恵子さん(34)。元研究者という異色の経歴を生かして国内外から寄せられるさまざまな相談に対応し、地元企業などの知的財産を守る弁理士として奮闘している。弁理士登録から来年4月で4年を迎えるのを前に、「地元の企業に商標登録を活用してもらい、和歌山のブランド力向上に努めていきたい」と意気込んでいる。

室伏さんは大阪府阪南市出身。智弁和歌山中・高校を卒業後、慶應義塾大学理工学部で「色素増感太陽電池」を研究。同大大学院理工学研究科で総合デザイン工学分野の研究に取り組んだ。卒業後は東京都内の企業で研究職を経て、和歌山にUターンした。

AGC㈱中央研究所の研究員として「ガラスの組成開発」の研究に取り組んでいた頃、転機が訪れた。研究成果で特許を取得するため、弁理士と打ち合わせをするうちに、弁理士の仕事に興味が湧いた。研究者時代には、発明者として特許出願を数件経験した。

2016年末に研究所を離れ、弁理士資格を取得するため受験勉強に専念。1回目の試験は、身重の体で長時間に及ぶ試験に臨んだ。

18年から都内の特許事務所で勤務。24歳年上の夫と共に長女を育てながら、日本国内で特許取得を希望する海外企業からの依頼などを、英語を駆使して受けていたという。

2回目の受験で見事に合格。平均4年程度かかる弁理士の試験を約2年で突破し、19年に弁理士登録された。

20年、横浜の響国際特許事務所に移籍。企業の知財部支援(発明発掘など)、県内外の大手電機メーカーや自動車メーカーの代理を百数十件以上、国際出願の代理も多数担当した。

ことし2月には横浜から実家のある阪南市に戻り、リモートワークで業務を続けたが、青春時代を過ごしたぶらくり丁がかつてのにぎわいを失っていたことを知り、独立を決意。

和歌山での開業にこだわったのは、弁理士の数が全国に比べて少ないということ。日本弁理士会によると、本県の登録弁理士数は東京の7617人に対し、室伏さんを含め現在19人。実際に知財活用に取り組んでいる県内の企業は限られている。

室伏さんは、「商標などの権利取得は地元企業だけでなく和歌山全体のブランディングにつながり、まちに活気が戻るはず」と話している。

「特許・商標登録でまちに活気を取り戻したい」と意気込む室伏さん

「特許・商標登録でまちに活気を取り戻したい」と意気込む室伏さん