未来へつなぐ多彩な音色 きのくに音楽祭閉幕

「きのくに音楽祭2022」は16日、全日程を終えて閉幕した。未来を担う子どもたちを中心に、ふるさとでの忘れられない音楽体験を贈ろうと、世界の一流アーティストの来日、国内外で活躍する和歌山ゆかりの音楽家たちの共演、和歌山の若い才能が集うコンサートなど、多彩な公演が身近で楽しめ、音楽文化の裾野を広げる4日間となった。

コロナ禍による中止を挟み、2年ぶりに開かれた今回は、昨年開館した県の新たな文化拠点、和歌山城ホール(和歌山市七番丁)をメイン会場とした。

世界最高峰と名高いラトヴィア放送合唱団の公演では、調和に満ちた伝統的な合唱曲や教会音楽の響きが会場を包んだ他、歌にとどまらない、人間の声による音楽の可能性を追求した前衛的な現代作品も演奏された。

日本を代表するピアノ三重奏団「トリオ・アコード」の公演は、ヨーロッパでも演奏機会は少ないというマルティヌー(チェコ)の作品など隠れた名品が聴ける機会となったことに加え、わずか3人の編成でも、大オーケストラのような壮大で重厚な世界をも表現できる、音楽の不思議さを体感する時間となった。

和歌山ゆかりの音楽家たちも豊かな音楽性、高い演奏技術を披露した。音楽祭総監督を務めた和歌山市出身のバイオリニストで前東京藝術大学学長の澤和樹さんは、自身も指揮、演奏に加わった公演で「和歌山の音楽家たちが世界に誇れるレベルを持っていることを認識してもらいたい」と語った。

最終公演は「ファイナル・コンサート~未来の音を聴かせて~」。ホルン奏者の日高剛さんをはじめとする「きのくにスペシャル・オーケストラ」が、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番、ベートーベンの交響曲第7番を演奏。『のだめカンタービレ』のピアノ音楽監修でも知られる三輪郁さんがピアノソロを務めた。

オーケストラとしては小規模の25人編成により、溶け合う響きの中に各奏者の音色が透けて見えるような、精緻で解像度の高い演奏が繰り広げられた。

アンコールには、コンサート冒頭に演奏されることの多いモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲が選ばれ、これからも続いていく音楽祭の未来の始まりを予感させた。

最終公演で聴衆の拍手を受ける「きのくにスペシャル・オーケストラ」

最終公演で聴衆の拍手を受ける「きのくにスペシャル・オーケストラ」

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