検察審査会に不服申し立て 多重事故遺族

昨年7月、和歌山市の紀の川大橋北詰の県道交差点で多重事故が発生し、危険運転致死容疑で逮捕された50代の女性が不起訴処分になったことを不服として、事故で亡くなった同市の竹田汐里さん(当時22)の両親が1日、代理人の田伏宏行弁護士と共に和歌山地裁を訪れ、和歌山検察審査会に審査を申し立てた。

事故は7月15日午前10時ごろに発生。50代の女性が運転する乗用車が前方の車に追突したり、その弾みで対向車線にはみ出したりなどして、車両6台と原付バイク1台が絡む多重事故となり、原付バイクを運転していた汐里さんが亡くなった。

県警は50代の女性に持病のてんかんの発作が生じ、事故を起こしたとみて逮捕したが、和歌山地検はことし8月、起訴できる十分な証拠が認められなかったとして、嫌疑不十分で不起訴とした。

9月には、父親の竹田正義さんが代理人弁護士と共に記者会見を開き、不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てる意向を明らかにしていた。

和歌山地方検察庁が10月、事故に関する客観的な証拠として捜査記録の一部を開示。その内容を精査し、不起訴は不当だとして今回の検察審査会への申し立てに至ったという。

検察審査会とは、有権者の中から選ばれた一般の市民が検察の判断が妥当かどうかを審査する機関のこと。2度にわたって起訴すべきという議決が出れば、検察の判断にかかわらず起訴される。

この日、和歌山地裁に申立書を提出した後、竹田さんは「(開示された)捜査資料にはそれなりの状況証拠がそろっていたが、なぜこんなに証拠があるのに危険運転致死だけでなく、過失運転致死にも問えなかったのか。不起訴だからということで内容が公表されないことが納得できない。刑事裁判をして全容を明らかにしたい」と述べた。

また、申し立てを受けて検察庁が検察審査会の前に自発的に再捜査し、起訴へ方向転換することを望み、「(汐里さんに)『不起訴から起訴に変わったよ』と伝えたい」と願った。

検察審査会に審査員として出席する市民に対しては、「もし自分の家族が同じような立場になり、普通にあると思っていた明日がある日突然なくなったら、ということを考えて判断してもらいたい」と話した。

 

「刑事裁判で全容を明らかにしたい」と話す竹田さん

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