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和歌山さんぽみちプロジェクト

県内で栽培広がる「紀の川柿」

前号では400㌘超えの特大サイズが栽培され、ブランド品種となっている「平核無柿(ひらたねなしがき)」を取り上げた。今週は平核無柿に手を加え、新たな名称を付けて販売されている「紀の川柿(きのかわがき)」を紹介したい。
紀の川柿は品種の名称ではなく、木になったままの平核無柿を脱渋して収穫されたもの。脱渋は平核無柿がまだ青い頃に、固形アルコールを入れた袋を果実にかぶせ、1日から2日かけて渋を抜く。その後、袋の底を開け、十分に熟すまでそのまま樹上で育てる。
樹上で完熟させるため、平核無柿と比べ表皮の色が濃く、果肉が黒くなる特徴があり、同じ平核無柿とは思えないほど。食してみると食感は平核無柿と変わらずしっかりとした実で、平均糖度が16~18度といわれるように甘さが感じられる。
紀の川柿は、脱渋処理の課題を解決しようと50年以上前に立ち上げられた協議会の努力により栽培が行われるようになったという。1975年ごろ、樹上脱渋法という脱渋処理についての技術が進み、和歌山県内の農家で栽培が始まり、紀の川柿の愛称が付けられている。
しかし、固形アルコールが入った袋をそのまま実にかぶせるという方法では、柿のヘタが枯れることや果実の日持ちが悪いなどさまざまな課題があり、栽培量は伸び悩む。そこで生まれたのがヘタを出して袋をかぶせ脱渋する方法。これにより課題が解決し、2006年に紀の川柿の栽培方法が確立し、栽培が広まった。
農水省統計で紀の川柿は平核無柿に分類されるため、正確な栽培面積は分からない。栽培に手間がかかることから生産量が少なく希少性が高い品種。黒い実が特徴の紀の川柿をぜひご賞味いただきたい。
(次田尚弘/和歌山市)