県と清華大交流1周年 記念シンポジウム

和歌山県と中国を代表する総合大学の清華大学(北京市)は8日、包括交流の覚書締結1周年を記念するシンポジウムを、和歌山市の県民文化会館で開いた。徐福や空海、南方熊楠、有吉佐和子ら、古代から続く両国の交流史に名前を残す和歌山ゆかりの人物や、今後の友好関係の展望などについて、研究者や行政関係者らが議論し、民間交流が日中関係の基本であり、先人たちが築いた遺産を現代に生かすことの重要性などを確認し合った。

清華大は1911年に創立。研究者や技術者、政府高官らを数多く輩出し、英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」によるアジア大学ランキング2021で1位、世界大学ランキング2022でアジア最上位の16位となっている。

県とは昨年11月に覚書を締結。学術や人材などの交流によって相互発展の取り組みを推進するとし、県内学生の留学や青少年の相互訪問による交流、県内大学との研究協力を進めることなどが想定されている。

今回のシンポジウムのテーマは「日中国交正常化50周年~日中友好における成果と未来~」。第1部では、清華大の李廷江教授・日本研究センター主任が基調講演を行った。

世界の聖地高野山 友好の最高の産物

李教授は、秦の始皇帝の命で日本に渡来したとされ、新宮市に伝承を残す徐福以来、和歌山は日中関係史において2200年前までさかのぼることができる「源流」の地であると指摘。弘法大師空海が中国から密教を持ち帰り、和歌山の地に開いた高野山については「中日友好の知的な面で最高の産物であり、世界の聖地と考えてよい」と述べた。

近代では、革命指導者・孫文と友情を結んだ博物学者の南方熊楠、戦後では、田辺市出身の片山哲元首相、和歌山市出身の作家・有吉佐和子、同市出身のパナソニック創業者・松下幸之助を挙げ、和歌山が多様な分野で日中友好に尽力した人物を輩出してきたことを強調。「和歌山は中日友好において最高の地位を占める」と語った。

第2部はパネルディスカッションで、伊東千尋和歌山大学長をコーディネーターに、添田隆昭高野山大学長、薛剣駐大阪中国総領事、中拓哉県日中友好協会会長、仁坂吉伸知事が登壇した。

留学生の受入期待 重要な青少年交流

添田学長は、若き空海が遣唐使として中国に渡り、密教の奥義を伝授された歴史、空海の学識や書の腕前などが当時の中国の人々に衝撃を与えたことにふれ、「弘法大師は日本史の中で最も中国文化を体現した人物」と話した他、高野山大でのさらなる中国人留学生の受け入れにも期待を示した。

中会長は、廖承志中日友好協会初代会長の書「中日友好千年萬年」を県日中友好協会が石碑にし、顕彰を続けていることを紹介。日中国交正常化後、初めて日本が受け入れた中国人留学生の一人で、自身と同窓である程永華氏が後に駐日大使となったことも話し、青少年交流の重要性を強調した。

先人の財産生かす 関係強化に参加を

薛総領事は、日中両国は「親戚関係」であり、お互いに相手なくして語ることができない国だと指摘。中でも戦後、両国を敵対国から友好国に転換するため、平和・友好の民間交流に尽くした人々の功績にふれ、「先人が残した貴重な財産をどう現代に生かすかを課題にし、一緒に新しい発展の旅を」と話した。

仁坂知事は、山東省、四川省と県の友好提携の取り組みなどを語った。1984年に締結した山東省とは、環境分野での協力、県職員の同省への留学などの実績があり、高齢者福祉での連携に関心が集まっていることなどを話し、ことし1月に締結したばかりの四川省とは、以前から白浜町でのパンダ繁殖研究などの交流の積み重ねがあることを紹介。今後も具体的な関係強化に期待を示し、県民にも、さまざまな立場からの交流への参加を呼び掛けた。

日中友好と和歌山について語るパネリストら

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