「和歌山には母がいる」 有吉玉青さん講演

和歌山市生まれの作家・有吉佐和子の魅力を紹介するイベントが21日、同市湊本町の市立博物館で開かれた。有吉佐和子記念館開館を記念し、文化の発信を目的に同市が主催。有吉さんの長女、玉青さんを迎えての講話やトークセッションの他、同市出身の落語家・三笑亭夢花さんが有吉さんゆかりの地・杉並にまつわる落語「堀の内」を披露した。

開会に先立ち、尾花正啓市長は「昨日(1月20日)は、有吉さんのお誕生日。ご存命なら92歳を迎えている。有吉さんが愛したふるさとを誇りに思えるような記念館にしていきたいと思う」とあいさつ。

玉青さんは記念館ができるまでの思いを話し、「私は仕事が忙しい母に代わって、和歌山生まれ、和歌山育ち、生粋の紀州女の祖母に育てられた。『なんでお母さんはこんなに家にいないの? お友達のお母さんみたいに家でご飯作ってよ』と母に批判的だった。作家になりたいと思ったことは一度もなかった」と子どもの頃を振り返った。

玉青さんは、母の死から5年後、母との日々をつづった『身代わり』で坪田譲治文学賞を受賞。作家として小説やエッセーを多数出版している自身の活動にふれ、「自分が作家をしてみて分かったのは、寝食を忘れてずっと物語の続きを考えていたい感覚が分かり、母の仕事ってこういうことだったんだな、仕方がなかったんだなと理解できるようになった」と話した。

記念館を開くきっかけについて「母が亡くなって5年後に祖母も亡くなり、寂しくてたまらなかった時、和歌山に一人旅をした。そこで祖母と母が家でよく使っていた言葉を聞き、和歌山にはおばあちゃんとお母さんがいると思って何度も来るようになった。和歌山の人は本当に良い人ばかり、和歌山に来ると楽しい、こういうところに母のものを残せたらいいなと思うようになった」と熱く語り、関係者に感謝の気持ちを伝えた。

最後に「記念館に行って、母のことを知ったり思い出したりしてください」と呼び掛けた。

トークセッションでは、同記念館の恩田雅和館長、近代文学研究者の岡本和宜さん、2020年から復刊リニューアル文庫の企画編集をしている河出書房新社編集者の東條律子さんが登壇。有吉さんの作品を振り返りながら、その裏側などを紹介した。

 

記念館開館への思いを話す有吉玉青さん

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