地域交流の拠点に 和大松下会館リニューアル

生涯学習の拠点として利用されてきた和歌山市西高松の和歌山大学松下会館が再整備され、リニューアルオープンした。これまでの機能に加えて、「学び直し」で注目されるリカレント教育や、起業家を育てるアントレプレナーシップ教育などに寄与する施設として活用が期待される。伊東千尋学長は「より開かれた学びにするため、学生だけのための施設ではなく、地域の方や産業界の皆さんとも学び合っていきたい」と話している。

松下会館は同市出身のパナソニック創業者の故・松下幸之助の寄付により、1961年に当時の同大学経済学部構内に学生会館として建設された。

鉄筋コンクリート2階建て。大正から昭和にかけて関西を中心に活躍した建築家・渡辺節(1884―1967)が晩年に設計を手掛けた。

87年に和大が栄谷に移転して以降、空き館だった建物を、和歌山大学生涯学習教育研究センターとして98年にリニューアル。その後約20年間、地域連携・生涯学習の拠点として活用されてきたが、2017年にその機能は栄谷キャンパスに一元化されたため、放送大学和歌山学習センターが入るのみとなっていた。

文化的にも価値のある建物の保全・活用が模索される中で、大学が創立70周年を迎えた2019年、記念事業として松下会館再生事業がスタート。個人や企業からも寄付が集まった。

22年度に和室や会議室の改修を進め、今回のリニューアルでは1階エントランスホールに展示コーナーを新設。2階の大ホールの一部を、大学の授業などに活用できるセミナールームとした他、オンラインコンテンツの収録や動画の編集作業ができる作業部屋、少人数のミーティングなどに活用できる部屋を設けた。また、コワーキング機能や交流機会の創出を備えた部屋「イノベーションコモンズ」を整備し、共創拠点として活用する。

5日に行われたオープニングセレモニーで、伊東学長は多くの支援のもとで改修が実現したことに感謝し、「和歌山大学が地域と接していく最初の拠点として、この会館を活用していきたい。共に発展できれば」と言葉を寄せた。

内覧会もあり、同大学経済学部の卒業生で、当時の会館を知る同市の渥美正道さん(77)は「時代に合わせたかたちで、建物を残してもらえて良かった。私たちの頃と違い、国立大も地方志向のいい流れになってきたように思います。この会館が地域の起爆剤になってくれれば」と話していた。

伊東学長(中央)ら関係者がテープカットで祝った

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