人力車で日本一周 上田さん笑顔でゴール

昨年6月10日に人力車を引いて日本一周の旅に出発した、和歌山市内原の上田樹生(しゅう)さん(22)が5日、47都道府県を回り269日の旅を終え、同市紀三井寺競技場前にゴールした。上田さんは「どこへ行っても誰かが助けてくれた。人とのつながりがなかったら、ここまでこられなかった。やって良かった」と晴れやかに話した。

上田さんは、さまざまな人とふれあいたいと日本一周を決意。昨年1月にクラウドファンディングを募り、3月末までに85人から、約180万円の支援が集まった。友人のアドバイスで、〝相棒〟に人力車を選び、知人を通して中古の人力車を購入し出発した。

これまで上田さんは、小学生から約12年間サッカーに没頭。和歌山北高校ではサッカー部の副キャプテンを務め、全国高校サッカー選手権大会にも出場。大学に進学したものの3カ月で中退。その後、海外に興味が湧き20歳の時にフィジーに約6カ月留学。将来は、もっと多くの世界を訪れ、さまざまな人とふれあいたいという夢ができ、まずは日本から回ることを決めた。

夜はテントで寝泊まりしたり、訪れた先で出会った人の家に泊めてもらったりしながら旅を続けたという。

一日に決めた距離を走り切ることを信念に持ちながら、各地でさまざまな人とのふれあいを楽しみ、一歩一歩進んだ。

ゴールの同競技場敷地内には、家族や同級生ら約40人が集まった。午後6時ごろ、ゴールの約250㍍手前に上田さんの姿が見えると、皆は「来た!おかえり」などと声を掛け、久しぶりに会う日焼けした上田さんを笑顔で迎えた。

「しゅう おかえり」と手書きの横断幕を掲げる同級生らの温かい出迎えに、上田さんは思いをこらえ切れず何度も涙をぬぐった。最後は片手を高く突き上げ「ありがとう」と笑顔でゴールテープを切った。

上田さんは「泣かないと思っていたが、角を曲がりみんなの姿が見えた時にこみ上げてくるものがあった。支えてくれて感謝しかない」と話した。中学の同級生の谷龍飛さん(22)は「本当にすごいしかない、地元の誇り。一回ゆっくり休んでほしい」とねぎらった。

ゴールを見守っていた父親の上田賢一さん(55)は「こんなにも人が駆け付けてくれてありがたい。この経験を生かしていってもらえたら」と喜び、祖母の和歌まさみさん(85)は「無事ならそれで十分。元気で帰ってきてくれてうれしい」と涙ぐんだ。

今後は、世界を旅し、より多くの人に出会って交流したいと新たな目標を掲げている。

ゴールで迎えた同級生らと上田さん(横断幕右)

ゴールで迎えた同級生らと上田さん(横断幕右)

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