注目の光免疫療法 県内2カ所で治療可能に

新たながん治療法として注目されている「光免疫療法」が、和歌山県内でも2カ所の医療機関(県立医科大学付属病院、日赤和歌山医療センター)で治療を受けることが可能になった。がん細胞に結合する抗体医薬品とレーザー光を使ってがん細胞のみをピンポイントで破壊する治療で、治験ではがん細胞が消えたり、縮小したりした人は43%と報告されている。手術や放射線治療が困難で、がんの再発を繰り返す、頭頸(とうけい)部がん患者への治療法として期待がかかる。

光免疫療法とは、米国立衛生研究所の小林久隆主任研究員が開発したがん治療法。2011年に論文が発表され、翌年には当時のオバマ大統領が一般教書演説で紹介するなど世界的な注目を浴びた。実用化に向けては楽天グループの関連会社、楽天メディカル(本社・米国)が開発に乗り出し、光免疫療法を基にした治療基盤「アルミノックス治療」を確立。20年には新薬と新医療機器の承認を得た。21年からは保険治療が適用され、現在は40都道府県の約100施設で治療が受けられるまでに広がっている。

アルミノックス治療は、歌手のつんくさんが患った喉頭がんや、タレントの堀ちえみさんが患った舌がんなどに代表される頭頸部にできるがんの患者が対象。がん細胞に吸着する特殊な薬剤を点滴した翌日、医療機器を使って患部にレーザー光を当てることで薬が反応し、周囲の正常な細胞を傷つけることなくがん細胞のみを破壊する。

がん治療は主に手術、放射線、薬物投与の三つの方法が標準的治療として挙げられるが、これら既存の治療を受けても効果がない場合に受けられるようになるという。医薬品の1回当たりの治療費は410万円程度で、医療機器の費用、入院費用などが加わる。

全国でも治療例は増えてきており、その後の経過ではがん細胞の死滅も確認されているという。楽天メディカルの担当者は「今後、和歌山県内でも新しいがん治療の選択肢として検討していただけるようになれば」と話している。

 

特殊な薬剤を投与後、患部にレーザーの光を当ててがん細胞を破壊する(楽天メディカル社提供)

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