連携不足を指摘 16歳虐待死で県検証委

2021年6月に和歌山市の鶴﨑心桜(こころ)さん(当時16)が死亡した虐待事件を受け、県がことし3月に設置した有識者による児童虐待等要保護事例検証委員会が29日、児童相談所や学校などが気になる言動を確認していながら、問題意識が低く、他機関や他職種との連携システムも構築できていなかったなどとする報告書をとりまとめた。

鶴﨑さんは同市加納のアパートで全身にあざのある状態で発見され、死亡が確認された。この事件では、母親(当時37)の再婚相手で同居していた木下匠(しょう)被告(42)が保護責任者遺棄致死罪で起訴され、今月15日に懲役6年(求刑懲役8年)の実刑判決が言い渡された。鶴﨑さんが亡くなった日に関西国際空港連絡橋(大阪府泉佐野市)から飛び降りて死亡した鶴﨑さんの母親は、同容疑で書類送検されている。

記者会見には県子ども未来課の鈴木玲(あきら)課長と、同委員会の委員長を務める和歌山信愛大学の桑原義登教授が出席。委員会が児童相談所や鶴﨑さんが通っていた中学校などから聞き取りした検証結果と提言などをまとめた報告書を発表した。

鶴﨑さんの両親が離婚した2013年当時、実父が鶴﨑さんの一時保護を求めていたことや、近隣から鶴﨑さんが夜間に1人で路上にいると児童相談所に通告がありながら、具体的な対応を取らなかったと指摘。

中学校への聞き取りでは、1年時に鶴﨑さんの体にあざのようなものがあるとの情報を受け、養護教諭が体を確認したが、あざが見つからなかったため、担任と養護教諭のみの確認で済ませて学校全体で共有していなかったことが分かった。

2年の頃からは鶴﨑さんの欠席日数が増え、3年時は一日も出席しないほど不登校が常態化していたが、担任とのやり取りは途中から全てメールとなり、家庭訪問も「拒否されているから」との理由で、住んでいるアパートの部屋番号も特定できていなかったという。

県教委の不登校対応マニュアルでは、連続して3日間欠席した生徒がいる場合、校内ケース会議を開くとしているが、鶴﨑さんが通っていた学校では一度も開かれておらず、同マニュアルが教育現場でどれほど周知・運用されていたのかは不明としている。

提言には同マニュアルの活用に加えて、児童虐待に特化した対応マニュアルの策定や、児童相談職員の計画的増員、子どもに関する諸機関の連携強化などが挙げられ、桑原教授は「早期発見、早期対応が大切。身体的な傷だけでなく、気になる行動を見逃さない姿勢を徹底し、有機的な連携の仕方を模索してほしい」と話した。

 

報告する桑原教授㊧と鈴木課長

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