上部内視鏡にAI導入 殿田胃腸肛門病院

医師とAI(人工知能)がタッグを組み、これまで以上に質の高い医療を提供しようと、和歌山県岩出市宮の殿田胃腸肛門病院は、県内で初めて上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)にAIシステムを導入した。がんや、がんの前段階のポリープをAIが検出し、医師の診断をサポート。笠野泰生院長(62)は「時代に即して最新機器を導入したので、足を運んでいただき、検査をしっかりと受けていただきたい」と受診を呼びかけている。

同院は医療業界におけるAI技術の進歩に伴い、数年前にAIシステムの導入を検討し始めた。「AIのメリットを生かし、質の高い医療につなげたい」と3月末、富士フイルムのAI内視鏡診断支援システム「CAD EYE(キャドアイ)」を導入した。

CAD EYEは大腸がん、胃がん、食道がんの早期発見をサポート。大腸や胃、食道のがんは、初期であれば、内視鏡や外科手術で切除できる可能性が高いことから、早期発見、早期治療につなげることが重要とされている。ただ、早期の病変は、サイズが微小であったり、形状が平坦であったりして、発見が難しいという課題があるという。

CAD EYEは内視鏡画像で病変が疑われる領域を見つけると、モニター上でその部位を囲んで表示する。報知音を鳴らして知らせ、医師による検出を支援。目視のみの診断に比べ、見つけにくい異常の発見や診断の精度向上に役立つという。

同社は2020年11月、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)時にポリープなどの病変の検出と鑑別を支援するCADEYEを搭載したソフトウェアを発売。昨年11月には、上部消化管領域の内視鏡診断を支援する医療機器を発売し、日本初の薬事承認(現時点で国内唯一)を取得している。

同院は、上部・下部(Version2版)ともに内視鏡画像診断支援プログラムのソフトウェアを導入し、4月25日時点で約110件の検査を行っているという。

笠野院長は使用感について「AIは泡や残渣(ざんさ)なども引っ掛けていくので感度的には拾い上げ過ぎるところはあるものの、ダブルチェックという意味では検査の質を上げていくことにつながる」と高く評価。「まだAIに負けていない自信はあるけれど、人間だとどうしても調子のいい日も悪い日もあるし、疲れる。AIは毎日同じ調子で文句も言わずによく働く」と話す。

現在の対策型胃内視鏡検診では、疾患の見逃しがないよう、画像データを別の医師が見直す(読影する)ダブルチェックが標準となっている。

AIは医師らエキスパート同等以上に疾患を発見できるとされており、今後AIが普及することで、対策型検診をAIと1人の医師で終えられるようルールが変わるのではとも期待。

同社の関西支社内視鏡システムセンターのマネージャー、布川竜也さんは「AIと医師の競争ではなく、見つけるのが得意なAIと、見分けるのが得意な医師とがタッグを組むことで、これまで以上に質の高い医療を提供できるようになれば」と話す。

笠野院長は、疾患が見つかったとしても早期発見であれば内視鏡手術で終えられるとし、「胃の症状やピロリ菌があると分かっている人は、ぜひとも進行しないうちに医療機関に足を運んでいただきたい。最新機器のある医療機関として、当院を選択肢の一つに入れていただければ」と来院を呼びかけている。

AIとのダブルチェックで検査する笠野院長

AIとのダブルチェックで検査する笠野院長

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