親の唾液で発症抑制か 小中生アレルギー

1歳までの乳児期に食器の共有やおしゃぶりを介して親の唾液と接触した学齢期(小中学生)の子どもは、アトピー性皮膚炎などの発症リスクが低下する関連性がみられることが、和歌山県立医科大学などの研究グループによる大規模調査で明らかになった。発症リスク低下のメカニズムの研究が進めば、アレルギーの発症予防につながることが期待される。

県立医大と兵庫医大、獨協医大、高槻赤十字病院による共同研究で、24日、県立医大の久保良美博士研究員(皮膚科学)、兵庫医大の金澤伸雄主任教授(同)、獨協医大の吉原重美主任教授(小児科)らがオンラインを交えて発表した。

近年、アレルギー疾患は先進国を中心に世界的に増加し、2021年度の国内調査では、何らかのアレルギーがある人は3人に2人。極端に衛生的な環境が増加原因の一つだとする「衛生仮説」が提唱されている。

13年のスウェーデンの先行研究では、おしゃぶりで親の唾液に接触した新生児は、ぜんそくやアトピー性皮膚炎の発症リスクが低下。親から子に口腔内細菌が移り、乳児の免疫系を刺激することでアレルギー予防につながる可能性が示唆されていた。

今回の調査は、これまでほとんど研究されていなかった学齢期を対象としたもので、石川県加賀市と栃木県栃木市の小中学生と保護者3570組にアンケートを配布し、3380組(94・7%)から回答を得た。

分析の結果、アトピー性皮膚炎の発症リスクは、親と食器を共有していた子どもで48%、親が口の中に入れたおしゃぶりを使っていた子どもで65%低下。アレルギー性鼻炎の発症は、おしゃぶりによる唾液接触で67%の低下が見られた。ぜんそくの発症については明らかな関連性までは確認できなかったが、おしゃぶりによる唾液接触で低下の可能性が推測されるという。

おしゃぶりの使用は、食器の共有よりも早い生後6カ月程度まで行われることが多く、より発症リスクの低下に効果的な傾向がみられることから、唾液接触のタイミングについて詳しい研究が必要としている。

久保博士研究員は「赤ちゃんの免疫を鍛えることが大事。発症リスクが低下するメカニズムを解明し、安全で効果的な小児アレルギー疾患の予防法開発につなげていきたい」と話していた。

今回の研究成果はアレルギー分野の国際専門誌「Journal of Allergy and Clinical Immunology Global」」に掲載され、インターネット上で見ることができる。

 

調査結果を説明する県立医大の久保博士研究員

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧