県産漆を使った黒根来 池ノ上さんが納品

和歌山県の郷土伝統工芸品「根来寺根来塗」の塗師・池ノ上辰山(しんざん)さん(63)は6日、『ミシュランガイド京都・大阪+和歌山2022』で二つ星に選ばれた和歌山市畑屋敷東ノ丁の「鮨義心」に黒根来の箱を納品した。

同店の大将、奥村義延さん(39)は14年前、同店をオープンして間もない頃に偶然、池ノ上さんの個展を訪れ、根来塗に出合った。

「できるだけ地元の物を使いたい」と10年ほど前に初めて根来塗のわんを依頼。県内外の客からわんについて質問されることも多く、400年以上生産が途絶えていた伝統工芸を池ノ上さんが復興させたことなど、地元が誇る伝統工芸品「根来寺根来塗」について説明する機会も多いという。

また、5年ほど前からは「自分が使う物も大量生産の物でなく、職人が作った物を使いたい」と、黒根来の箱を依頼するように。四つの異なる大きさの箱には、常温の笹ずしを入れたり、卵焼きを入れたりして愛用している。

今回納品された黒根来の箱は、マグロを入れるための物として、希望の寸法(縦約22㌢、横約31㌢、高さ約11㌢)を伝えて依頼。池ノ上さんが約1年半の歳月をかけて制作した。

池ノ上さんとその弟子らは21年から毎年、岩出市根来の根来山げんきの森で自分たちが植樹した漆の木から漆を採取しており、昨夏の採取(漆かき)には奥村さんも参加。

今回納品された黒根来の箱には、最後の上塗りの工程で奥村さん自らが採取した漆も混ぜて使われており、より一層思い入れの強い物に仕上がった。

奥村さんは黒根来の箱を手に「うれしい」と目を細め、池ノ上さんは「県産の漆を使った貴重な物。使えば使うだけ色が出て面白い」と根来寺根来塗の魅力を伝えていた。

黒根来の箱を手に池ノ上さん㊧と奥村さん

黒根来の箱を手に池ノ上さん㊧と奥村さん

関連記事

同じカテゴリのニュース一覧